2024.02.28
2020年10月、政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すことを宣言しました。
具体的には、二酸化炭素(CO₂)をはじめとする温室効果ガスの「排出量」と、植林・森林管理などによる「吸収量」の合計を、実質ゼロにすることを目指すものです。 木を燃やすとCO₂が発生しますが、木は、大気中のCO₂を固定してできたものなので、燃やしてCO₂が出ても大気中のCO₂は増えません。つまり、バイオマス、バイオガスはカーボンニュートラルと言えます。今回は、そのようなバイオガス バイオマスについて詳しく紹介します。
目次
カーボンニュートラル実現への取り組みが進む一方「化石燃料への高い依存度」は大きな課題です。日本の一次エネルギー供給における化石燃料の依存度は、2019年時点で84.8%。依存度は少しずつ減少しているものの、まだまだ高い割合です。
カーボンニュートラル社会の実現には、化石燃料から太陽光・風力・地熱・中小水力・バイオマスといった再生可能エネルギーへのシフトが重要です。
政府の宣言を受けて、国内の多くの企業・団体もカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを始めています。例えば、JGA(日本ガス協会)では「カーボンニュートラルチャレンジ2050アクションプラン」において、2050年に都市ガスの最大5%をバイオガス等でまかなうとしています。
カーボンニュートラルの実現には課題がありますが、解決手段の一つとして「バイオマス/バイオガス」の利用が注目されています。
(参照)
『2021—日本が抱えているエネルギー問題(前編)』(資源エネルギー庁)
『カーボンニュートラルチャレンジ2050アクションプラン』(JGA)
再生可能エネルギーの一つであるバイオマスとは、具体的にどのようなものでしょうか。また、バイオマスが持つポテンシャルと活用方法への理解を含めるために、バイオガスの製造方法についても紹介します。
バイオマスは再生可能な、生物由来の有機性資源(化石資源を除いたもの)、バイオガスは微生物の力(メタン発酵)を使って食品廃棄物等(バイオマス)から発生するメタンとCO₂を主成分とするガスです。バイオマスを活用し、バイオガスを生み出すことで 、カーボンニュートラルを目指します。
バイオマスは、下記のように多岐に亘っており、どのような活用方法が良いか、そのバイオマスの成分・特性によって変わってきます。
※資源エネルギー庁『バイオマス発電』の図表を参照し作図
また、注目したいのは、バイオマスに廃棄物が含まれる点で、これらをエネルギー等で有効活用することで、廃棄物の処理量を削減でき、環境負荷の低減、CO₂排出量の削減が期待できます。
バイオマスの活用方法は様々ですが、バイオマスを直接燃焼したり、ガス化して発電する「バイオマス発電」や直接燃焼して排熱ボイラから発生する蒸気の熱を利用したりする「バイオマス熱利用」などがあります。
Daigasグループでは、バイオマス発電を推進する際、エネルギー・燃料の「地産地消」を目指し、国産木材によるバイオ燃料の長期・安定供給実現に取り組んでいます。
そこで、大阪ガス株式会社は、バイオマス発電所向けに国産木質バイオマスの調達および販売を行う事業会社として株式会社グリーンパワーフュエルを設立し、国内の林地未利用木材等の長期安定的な活用を目指しています。
バイオマスの燃焼によって発生した熱を、暖房・給湯などに利用します。例えば、工場から排出されるバイオマスを燃料として有効活用することで、再生可能エネルギーの活用と廃棄物削減を両立。工場運営におけるランニングコストの削減が期待できます。
バイオマスボイラシステムを導入し、産廃処理の大幅な削減を実現した事例もあります。
バイオガスは、前述の通り、バイオマスのメタン発酵等によって発生するガスで、メタンとCO₂が主成分です。
バイオガスの製造方法には、固形有機廃棄物から製造する方法や排水から製造する方法があります。
固形有機廃棄物の活用方法としては、「メタン発酵」でバイオガスを製造する方法以外に「堆肥化」することもできます。 堆肥化は、処理期間の短さがメリットですが、空気を入れるための電力が必要な点・温室効果の大きい一酸化二窒素(N₂O)を排出する点などがデメリットです。
一方、メタン発酵は、滞留時間が30日程度かかる点はデメリットですが、空気を入れるための電力が不要でバイオガスが有効利用できる点がメリットです。
排水の処理方法には「好気処理(活性汚泥法)」や「嫌気処理(UASB法)」があります。
好気処理は、空気を入れるための電力が必要で、水とCO₂に分解されるだけでバイオガスとしての有効利用ができません。
一方、嫌気処理は、空気を入れるための電力が不要で、バイオガスとして有効利用できます。また、グラニュールと呼ばれる(正式名はGranular Sludge)メタン生成菌のかたまりを使うことで、設備のコンパクト化も図れます。
なお、バイオガスの利用に際しては、利用形態に合わせた不純物除去やメタンとCO₂の割合の調整などが必要です。Daigasグループでは、利用形態に合わせた処理方法・設備提案なども行っています。
メタネーションとは、CO₂と水素を反応させて、都市ガスの主成分である「メタン」を作る技術です。水素を再生可能エネルギーで作れば、カーボンニュートラルなメタン(e-methane)が生成できます。
メタネーションと同じ反応を「メタン発酵汚泥中の微生物」で起こすことができます。このことで、バイオガス中のCO₂のメタン化が可能となり、バイオガスのメタン濃度を高めることができます。これが「バイオメタネーション」です。
▲バイオメタネーションのイメージ
カーボンニュートラルなバイオガスに水素を加えることで、ニュートラルな状態から一歩踏み込んだ本当の意味でのCO₂排出量削減の推進に繋がれば良いと考えます。Daigasグループの資源を活用し、幅広いパートナーさまと協力して、バイオマスの活用によりカーボンニュートラル社会の実現に貢献していきたいと考えています。
2025年に開催される大阪・関西万博会場では、e-methaneを製造し、会場の一部施設へ供給するプロジェクトも進んでいます。
具体的には、会場内で発生する生ごみからバイオガスを生成し、バイオガスに含まれるCO₂と再エネ電力から得た水素でメタネーションによりe-methaneを製造。会場内の都市ガスを消費する機器に使用します。
大阪市さま・京都大学さま・㈱NJSさま・大阪ガス株式会社の共同で、バイオメタネーションの小規模フィールド試験(国土交通省・令和4年度下水道応用研究採択)を進めています。
大阪市海老江下水処理場にて2022年度よりスタートし、バイオメタネーション技術の段階的なスケールアップを目指します。
最後に、カーボンニュートラル社会の実現に寄与する、Daigasエナジーのソリューションをご紹介します。
D-Bioは、バイオマスの有効利用を通じて、廃棄物処分量とCO₂排出量の削減を実現するサービスです。代表的なシステムの1つである「オンサイト型バイオガス化装置(D-Bioメタン)」は、これまでバイオガス化が難しかった食品工場や大型商業施設(食品廃棄量1~3トン/日)に適しています。
この他、カーボンニュートラルな蒸気の供給サービス「D-Bio Steam」も、2021年より提供スタートしました。
カーボンニュートラルに関する