茶かすを燃料としたバイオマスボイラシステムをエネルギーサービスで導入した国内初の取り組みで、廃棄物量とCO2排出量の削減を実現
和歌山ノーキョー食品工業株式会社さまは、オリジナル飲料を手掛けながらも大手飲料メーカーの多様な飲料を製造・充填する関西屈指の飲料受託製造企業です。国内初の無菌充填ペットボトル詰設備を設置した、業界の先駆的存在である海南工場さまにおいて、今回バイオマスボイラシステム「D-Bio Steam」をご導入いただきました。本取り組みは、廃棄物として処理されていた茶かすを流動床炉内で自燃させ、カーボンニュートラルな蒸気を発生させるバイオマスシステムをエネルギーサービスで導入した国内初の試みで、廃棄物量の削減とCO2削減につながる画期的なシステムとして注目されています。
D-Bio Steam導入によるメリット
- 茶かすをバイオマス燃料として活用し、年間約90%の廃棄物量を削減見込み
- カーボンニュートラルな蒸気を生産工程で利用することにより、年間約600tのCO2を削減見込み
- フルメンテナンス込みのエネルギーサービスにより事業継続性を確保
導入の背景
SDGsの観点から、茶かすの廃棄物量の削減に注力
和歌山ノーキョー食品工業株式会社さまは、農産加工・飲料製造など様々な事業活動を通じ、SDGsの取り組みに注力されています。その一環として、製造に伴い排出される茶かすの廃棄物量を削減する必要があるとお考えでした。
海南工場さまが排出される茶かすは水分率が約60〜70%と高く、中でも麦茶かすは澱粉質で粘着性があり、大部分は廃棄物として処理していました。過去には肥料等の再利用も検討しましたが、肥料の場合は肥料化に必要な乾燥工程においてガスを大量に消費するため、増エネルギーにつながる恐れがありました。
お客さまとともに様々な案を考える中で思い当たったのが、工場内にあった蒸気の製造設備の存在でした。今までその蒸気設備の熱源は都市ガスでしたが、茶かすを燃やして熱源にできてしまえば、都市ガスの省エネができる上に茶かすの廃棄物量も減り、さらにCO2削減にもつながるのでは、という結論に至りました。そこで茶かすを熱源に蒸気エネルギー化する「D-Bio Steam」の開発を開始しました。
導入前の検討内容
茶かすの安定燃焼と搬送の技術的課題を解決
フルメンテナンスを含めたエネルギーサービスを提案
茶かすを燃料として使用する上で、2つの技術的課題がありました。
1つ目は、燃焼の安定性に関する課題です。今回のシステムは茶かすを流動床炉(※)で自燃させ、排ガスボイラで蒸気を発生させるシステムです。このシステムには大量の茶かすを安定して燃焼させることが必須でしたが、茶かすの水分量にばらつきがあり、なかなか安定燃焼しませんでした。海南工場さまと何度も試験を重ねた結果、排ガスと燃焼空気を熱交換させて燃焼空気をある一定の温度まで昇温することで、茶かすの自燃が可能になることが判明しました。また、有害な流動砂クリンカの発生リスクやNOx規制も問題なくクリアできることも確認しました。
※流動床炉:下部から噴き出す空気の力で流動する高温の砂の中で燃焼させることで、水分の多い物質でも安定燃焼させることができる燃焼炉
2つ目は、茶かすの搬送に関する課題です。茶かすを燃やすには、まず茶かすの受入ホッパからコンベアを通して、流動床炉に送り込む必要があります。しかし麦茶かすは澱粉質が多いため、搬送用のコンベアに付着して連続的な運転ができなくなる恐れがありました。そこでコンベアメーカーさまに茶かすを持ち込んでテストを実施し、搬送方法を検討しました。その結果、付着の少なかった2種類の方式を組み合わせた搬送方法を採用しました。
設備容量や細かな仕様についてお客さまや各メーカーと議論を重ね、本システムを導入頂きました。
事業継続性の確保のため、設備費用やフルメンテナンスも含めたエネルギーサービスをご提案しました。
導入後の成果
茶かす廃棄物量の約90%とCO2排出量約600トンを削減できる見込み
海南工場さまでは、茶かすを燃料として利用することで廃棄物量が年間で約90%減少する見込みで、さらにカーボンニュートラルな蒸気を生産工程で利用することにより、年間で約600トンのCO2削減効果を見込んでいます。
また、システム導入に際しては、フルメンテナンスを含んだエネルギーサービスをご契約いただきました。設備関連費用はもちろんのこと、定期点検、突発対応、部品交換などのメンテナンス費用も平準化するスキームとなっており、2023年5月からサービスを開始しています。
お客さまからのコメント
当社課題に対する粘り強い取り組みと技術的解決力が決め手
今後も安定稼働のサポートと更なるSDGsに貢献する提案を期待
今回導入いただいた決め手や、今後Daigasエナジーに期待することを教えてください。
当社はSDGsの観点から、太陽光発電設備やコージェネレーション設備の導入による再生可能エネルギーの活用等により、環境負荷低減を推進しています。廃棄物量の削減についても取り組みが必要だと考えておりましたが、麦茶かすは澱粉質で扱いにくいこともあり取り合ってくれるところが無く困っていました。そのような状況の中で一緒に検討してくれたDaigasエナジーさんは、搬送や燃焼などの試験を粘り強く繰り返し、技術的課題解決をしてくれました。エネルギーサービス契約開始以降、安定稼働ができており、当初の期待効果は達成できる見込みです。
今後もDaigasエナジーさんにはバイオマスボイラシステムの安定稼働に向けたサポートに加え、更なる当社のSDGsへの取り組みに貢献する提案を期待しています。
担当者からひと言
「D-Bio Steam」の導入により、海南工場さまの課題であった茶かすの廃棄物量を削減するとともにCO2削減にもつなげることができ、お客さまのご要望にお応えできたことを嬉しく感じています。国内初の試みであり、お客さまのご協力があったからこそ実現できたものと感謝しております。
今後もご満足して長期間ご使用いただけるようメンテナンス対応などを確実に行ってまいります。これからもお客さまと同じ立場で課題に向き合い、様々な形でお応えしていきたいです。
大阪産業エネルギー営業部 リーダー 米家 武朗
お客さまのご紹介
和歌山ノーキョー食品工業株式会社 海南工場さま
和歌山ノーキョー食品工業株式会社は、オリジナル飲料を手がけながらも大手飲料メーカーの多様な飲料を製造・充填する関西屈指の飲料受託製造企業。日本で初めてペットボトル詰飲料を製造し、ペットボトルの無菌充填設備を導入。大手飲料メーカーから「技術の和歌山」と呼ばれるほどの、品質保証における信頼を誇る。さらに、ペットボトルの成形から飲料の製造、充填までを一貫して行う製造ラインも整備し、茶、果実・炭酸飲料、酒類など多種多様な飲料の製造、ペット・缶・紙などあらゆる容器・容量の充填を可能にする体制を確立している。
- 所在地
- 和歌山県海南市日方字新浜1294番地
- お客さまホームページ
- https://www.karin.co.jp/
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