「カーボンニュートラルをもっと知りたい」そんな方々に向けて、さまざまな情報をお届けしています。今回のテーマはe-メタン(イーメタン)です。e-メタンはカーボンニュートラル達成に貢献するエネルギーとして期待されています。
本記事ではe-メタンの概要やメリット、実証事業事例などを通じて、e-メタンについてご紹介します。
1. e-メタン(合成メタン)とは
e-メタンとは、CO₂と再生可能エネルギー由来の水素を原料として製造される合成メタンです。e-メタンの「e」には、エネルギー政策を進める上での原則である「S(安全性:Safety)+3E(安定供給:Energy
Security・経済効率性:Economic Efficiency・環境適合:Environment)」を実現するエネルギーとの想いが込められています。
また、eメタンを製造する技術のことをメタネーションといいます。大気中に放出されるCO₂を回収し、メタネーションの原料としてカーボンリサイクルするため、e-メタンを燃焼しても大気中のCO₂の量は実質増加しません。そのためメタネーションは、カーボンニュートラルをはじめとした気候変動対策の鍵となる技術として注目されています。
2. e-メタンのメリットと課題
e-メタンには「環境性」、「経済性」、「安定性」3つの観点でメリットがあります。それぞれのメリットを詳しく解説していきましょう。
メリット①:環境性
- ・排出計上済みのCO₂をリサイクルすることにより、e-メタン燃焼時のCO₂排出計上がゼロになります。
- ・天然ガス火力発電の燃料を天然ガスからe-メタンに切替えることによって、火力発電による電気エネルギーの脱炭素化が可能です。
- ・クリーンガス証書制度により、環境価値の認証や移転を実現します。
メリット②:経済性
- ・天然ガスとほぼ同じ成分であるため、お客さまの燃焼機器を交換する必要がなく、既存のオペレーションのまま、シームレスな移行が可能です。
- ・既存インフラを活用可能であるため、燃料転換による社会コストを低減できます。
メリット③:安定性
- ・既存インフラを使って天然ガスとe-メタンを同時に供給が可能です。e-メタンの供給が不足する場合でも一時的に天然ガス利用へ戻せるため、高い供給安定性を確保できます。
e-メタンの課題
e-メタンの課題として製造コストの高さが挙げられ、普及・拡大には技術革新による低コスト化・大量生産の複数拠点化が不可欠です。
3. e-メタンの展望
2025年2月に閣議決定された「第7次エネルギー基本計画」では、次世代エネルギーの確保/供給体制の項目において合成メタンが触れられています。2030年度において、供給量の1%相当の合成メタン、またはバイオガスを導管に注入し、その他の手段と合わせてガスの5%をカーボンニュートラル化していくとしています。
Daigasグループはお届けする都市ガス1%に相当するe-メタンを、2030年に導入することを目指しています。
国内メタネーション実証事業
ここでは国内企業のメタネーション実証事業をいくつかご紹介します。
- ・大阪ガス株式会社
- 環境省の実証事業のもと、エネルギーの地産地消型モデル構築を目指し、2024年度に舞洲工場内で実証を行った後、2025年4月から大阪・関西万博の会場内で実証を行う予定です。
- ・日立造船株式会社
- 環境省事業として小田原市の清掃工場から回収したCO₂を活用したメタネーションモデル実証を開始。地域共生圏構想にて、地域エネルギー活用技術の社会実装を目指しています。
- ・UBE三菱セメント
- 九州工場黒崎地区で、セメント排出ガスCO₂のメタネーション適応性評価を実施中です。
- ・デンソー
- 愛知県安城工場で、メタネーションを活用した工場内CO₂循環の実証を開始しています。
また海外プロジェクトとしては以下のようなものがあります。
- ・キャメロンプロジェクト(米国)
- 東京ガス、大阪ガス、東邦ガス、三菱商事、センプラが参画し、テキサス州、ルイジアナ州にて近隣工場から調達したCO₂と水素により合成メタンを製造し、日本に輸入するプロジェクトです。
- ・トールグラスプロジェクト(米国)
- 大阪ガス、トールグラス、グリーンプレーンズが参画し、米国中西部にてバイオマス由来のCO₂と水素によりe-メタンを製造し、日本に輸入するプロジェクトです。
(参照)
メタネーション取組マップ2023(資源エネルギー庁)
天然ガスと合成メタン(e-methane)をめぐる状況について(資源エネルギー庁)
INPEX・大阪ガス実証実験
大阪ガス株式会社はINPEXと共同で、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から採択された助成事業のもと、技術開発事業を2021年より開始しています。具体的には、都市ガスのカーボンニュートラル化に向けたCO₂メタネーションシステムの実用化を目指しています。そのため世界最大級となる家庭用1万戸分に相当する試験設備の建設を開始しました。
4. まとめ
- ・e-メタンとは、CO₂と再生可能エネルギー由来の水素を原料として製造される合成メタンです。e-メタンを燃焼しても大気中のCO₂の量は実質増加しないため、カーボンニュートラル実現に貢献するエネルギーとして注目されています。
- ・e-メタンは「環境性」、「経済性」、「安定性」3つの観点でメリットがある一方、コスト面の課題があり、普及・拡大には技術革新による低コスト化・大量生産の複数拠点化が必要とされています。
- ・政府の支援のもと、メタネーション技術は開発が促進され、大手ガス会社による国内、海外での実証事業が次々開始されています。
カーボンニュートラルの実現への貢献が期待されるe-メタンの概要やメリット、実証事業事例について解説しました。e-メタンへの期待は高まっており、今後、開発は促進されていくことが予測されます。
Daigasグループは、2050年カーボンニュートラル実現に向け、e-メタンのみならず、再生可能エネルギーや水素などの次世代エネルギー導入を含め、多様な選択肢を追求していきます。エネルギートランジションを推進することで、皆さまと共にCO₂排出削減に挑戦します。
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