「カーボンニュートラルをもっと知りたい」そんな方々に向けて、さまざまな情報をお届けしています。今回のテーマは、企業が行う気候変動対策についての情報開示・評価の国際的基準、「国際イニシアティブ」です。
いま、世界で多くの異常気象が観測され、気候変動対策の重要性が高まっています。そこで企業に対しては、温室効果ガスの排出削減に向けた積極的な取り組みと情報開示が求められています。
国際イニシアティブへの参加は、ステークホルダーへの脱炭素のアピールにつながります。これらの概要や目的、基準などを通じて、国際イニシアティブへの理解を深めていきましょう。
国際イニシアティブとは、複数の国や国際機関が協力して特定の課題や目標に取り組むための活動やプロジェクトを指します。その課題は多岐にわたり、貧困や人権、平和なども対象になります。中でも世界的な課題である環境保護は、注目度が高く、地球環境にまつわる国際イニシアティブはいくつかの種類があります。
近年、洪水・豪雨・熱波・森林火災・干ばつなどの異常気象や災害が、世界各所で頻発・甚大化していますが、その一因と考えられているのが地球温暖化です。
気象庁によると、世界の年平均気温は様々な変動を繰り返しながら上昇しており、長期的には100年あたり0.76℃の割合で上昇しています。また、JCCCA(全国地球温暖化防止活動推進センター) は、温室効果ガスの大幅な排出減少が実現しない場合「21世紀内に1.5℃及び2.0℃超の地球温暖化が予測される」と推測しています。
私たちの経済活動によって排出される温室効果ガスは、地球温暖化を加速させる要因とされ、その削減は世界の企業にとって喫緊の課題となっています。
国際イニシアティブへの賛同・参加は、地球温暖化の解決に貢献できるほか、環境意識の高い企業としての存在感を高め、有望なESG投資先としてのアピールにもつながります。
気候変動に関する国際イニシアティブはいくつか存在します。参加・賛同は任意ですが、すでに多くの日本企業が取り組んでいます。
以下、特によく耳にする4つの国際イニシアティブ(CDP・TCFD・SBT・RE100)をご紹介します。
CDP(Carbon Disclosure Project)は、企業や都市の環境情報の収集や、大企業への公開質問・格付けを実施する非営利団体です。「人と地球にとって、健全かつ豊かな経済の維持」を目的にイギリスで2000年に設立され、世界最大の環境データベースを保有しています。
毎年春に送付されるCDP質問書事項への回答が、加盟の条件です。
質問書は温室効果ガスの排出量・削減目標・生物多様性に関する質問などへの回答が求められる「気候変動」、特定の原料(天然ゴム、大豆、木材など)を用いた商品使用の森林に対する影響などへの回答が求められる「フォレスト(森林減少リスク・コモディティ)」、取水・排水・リサイクルしている水量のモニタリング状況などへの回答が求められる「水セキュリティ」の3分野から成っています。
CDPは年に1度、集計した質問書の回答をもとに、各企業のスコアリングを実施します。スコアリングは良好なスコアから順に、リーダーシップレベル(A・A-)、マネジメントレベル(B・B-)、認識レベル(C・C-)、情報開示レベル(D・D-)、無回答(F)の5つに分類されています。
2023年時点での企業加盟数は、世界およそ23,000社です。日本企業は、花王・積水ハウス・イオン・味の素・ANA・アサヒグループホールディングス・大阪ガスなど、およそ2,000社が加盟しています。
なお『CDP 気候変動レポート2022:日本版』(CDP)によれば、質問書の回答を元にしたスコア付けの中で最も高い「Aリスト認定」された日本企業は、世界最多の75社に上ります。
TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)は、FBS(金融安定理事会)がG20の要請で、2015年に設立しました。
企業活動における気候変動の影響を、金融機関・投資家へ開示することを目的としています。
TCFD提言(2017年6月発表の最終報告書)へ賛同することが加入の条件です。TCFDに賛同した上で、TCFDのホームページから、声明の提出などの手続きを実施し、自社の公式文書やウェブサイトに明記することで、TCFDの支持を表明することができます。
また、情報開示する場合の項目は、気候関連のリスクや機会に対する「ガバナンス/戦略/リスク管理/指標と目標」の4つから成り立っています。
2023年10月時点での企業・金融機関賛同数は、世界4,872社です。日本では、三菱UFJフィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ、NTTドコモ、ソフトバンク、KDDI 、トヨタ自動車をはじめとする、1,470社が賛同しています。
なお『TCFD提言と気候関連情報開示』(国土交通省)によればTCFDに賛同する国内プライム上場企業の82%(約640社)が情報開示済みです。
SBT(Science Based Targets)は、パリ協定の基準に基づく温室効果ガス排出削減目標です。
WRI(世界資源研究所)・WWF(世界自然保護基金)・UNGC(国連グローバル コンパクト)などから成る組織であるSBTi(Science Based Targets initiative)によって設立されました。
自社の排出(Scope1=自社の工場・オフィスなど直接排出/Scope2=エネルギー起源間接排出)とサプライチェーン全体の間接排出(Scope3)の双方で目標設定することが、認定の条件です。具体的に、自社の直接排出では、産業⾰命前の平均気温と比較して1.5℃以内(例年4.2%以上)の削減。サプライチェーンの間接排出では、産業⾰命前の平均気温と比較して2℃以下の⽔準(例年2.5%以上)の削減を設定します。いずれも長期的な目標(5~15年先)の策定が求められます。
なお、 通常のSBTに加えて、要件が緩やかな「中小企業向けSBT」も用意されています。
2024年3月時点での認定企業・金融機関数は、世界5,468社(コミットする企業数は8,334)です。日本では、SBT認定・コミットする企業は、電気機器、建設業をメインに1,000社を超えました。これはイギリスに次ぐ世界2位の多さです。
RE100(Renewable Energy 100%)は、企業が100%再生可能エネルギーを使用することを目指す取り組みです。NGO団体・The Climate GroupがCDPとのパートナーシップのもとで、2014年にスタートしました。
RE100では、事業活動で使用する全ての電力を再生可能エネルギーに置き換えることを目標としており、温室効果ガスの削減を目指すCDP・SBT・TCFDとは一線を画すイニシアティブということができます。
参加に際しては、2050年までの100%再生エネルギー達成に向けた目標設定と中間目標の設定、年1回の進捗報告を実施します。
ただし「年間消費電力量100GWh以上」をはじめ、2024年1月より「運転開始日などから15年以内の電源からの調達が必要」という追加要件が加わるなど、 参加には多くの基準・要件をクリアしなければなりません。そこで基準・要件をクリアできない企業向けに『再エネ100宣言RE Action』(一般社団法人再エネ100宣言 RE Action協議会)も用意されています。
2024年6月時点での参加企業は世界で400社以上です。日本では建設業、電気機器、小売業を中心とする87社が参加しています。
国際イニシアティブに参加することで、企業は自社の環境負荷を把握し、削減するための具体的な行動を促進することができます。また、企業が環境に配慮した経営を行うことを公に宣言することで、事業の持続可能性と企業の価値向上につながります。
Daigasエナジーでは、CO₂排出量見える化・削減・報告サービス「アスエネ」を提供するアスエネ社と連携し、 企業さまの低・脱炭素化を支援します。
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