2024.02.07
エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)は、法律名が「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」(改正省エネ法)へ2023年4月に変更されました。世界的な課題である地球温暖化対策を進めていくために、さらなる省エネの促進・再生可能エネルギー等の非化石エネルギーの導入拡大・エネルギー需給構造の変化を踏まえた新たな取り組みの必要性を受け、法律の内容も見直されました。
改正省エネ法では何が見直されたか、企業が対応すべきことは何かについて詳しく紹介します。
目次
「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」(改正省エネ法)では、一定規模以上の(原油換算1,500kl/年以上使用する)事業者に、エネルギーの使用状況等について定期的に報告し、省エネ取組の見直しや計画の策定等を行うことを求めています。「工場・事業場を持つ事業者・運輸業者」などが、メインの規制対象となります。
今回の改正のポイントは、主に以下の3点です。
改正省エネ法では、省エネ法が定義するエネルギーの範囲が広がり、全エネルギー使用に対して合理化が求められます。
改正された中で下記の3点についてご紹介します。
改正省エネ法では、従来の化石エネルギーに加え、非化石エネルギーも合理化の対象となり、報告が義務付けられます。
これにより、製紙業やセメント業など、非化石エネルギー(黒液、廃棄物、バイオマス)の使用量が多い業種は、特定事業者の数が増加する見込みです。
参照:省エネ法の手引き 工場・事業場編 ―令和4年度改正対応―より
表1 調達方法別 電気の一次換算係数
省エネ法では、全エネルギーを一次エネルギー換算(原油換算)で報告します。そのための電気の「一次換算係数(一次エネルギー換算係数)」が表1です。
一次換算係数が、9.76MJ/kWhから8.64MJ/kWhに変更され、電気使用量が多い業種(業務部門など)は、特定事業者の数が減少する見込みです。
今回の変更の特徴として、一次換算係数は、電気の調達方法で異なります。
自家発太陽光・オンサイトPPA(太陽光発電設備を敷地内に設置し、需要家が発電した電気を、自ら消費する方法)では、これまで報告対象外でしたが、3.6MJ/kWhに変更されています。一方、オフサイトPPA(太陽光発電設備を敷地外に設置し、系統を通じて需要家への電気供給を実施する方法)では、一次換算係数が9.76MJ/kWhから3.6MJ/kWhに変更され、オンサイトPPA同様の省エネ評価をされるようになりました。
改正省エネ法では、前述の通り従来は報告対象外だったオンサイトPPAなども、報告対象になります。
そのイメージを表したのが下図です。例えば、買電(PPA未導入)していた中で1,000MWhをオンサイトPPAもしくはオフサイトPPAで調達した場合、これまでの省エネ法と改正省エネ法でどのように評価が変わったのか説明します。
表2 省エネ法の改正前後での調達方法による電力:1,000MWhの原油換算エネルギーの違い
これまでの省エネ法の場合、買電1,000MWhをオンサイトPPAに置き換えた場合は原油換算エネルギー使用量としては対象外で0klとなり、買電:252kl(=1,000MWh)全てのエネルギー分が省エネとして評価されていました。しかし、今回の改正で、買電の一次換算係数が小さくなったこととオンサイトPPAに一次換算係数3.6MJ/kWhが導入された(前述、表1)ので、原油換算エネルギー使用量で93klとなり、130klの省エネ評価になります。同じ設備を導入しても改正前後で評価が変わってきます。
一方、オフサイトPPAの導入の評価に関しては、オンサイトPPA同様で、例えば、買電1,000MWhをオフサイトPPAに置き換えた場合には、これまでの省エネ法では通常の買電と同じ扱いで省エネ評価はされませんでした。しかし、今回の改正でオフサイトPPAの一次換算係数は9.76MJ/kWhから3.6MJ/kWhに変更された(前述、表1)ので、オンサイトPPA同様の原油換算エネルギー使用量93klとなり、買電と比べて130klの省エネ評価になります。
改正省エネ法では、全ての特定事業者は、使用した電気全体に占める非化石電気の比率について、目標の設定と、それに向けた計画の策定、実績値の報告を行う必要があります。
更に特定事業者の中で、5業種8分野(鉄鋼業、セメント製造業、製紙業、石油化学業、自動車製造業)はこの目安に基づく目標設定に加え、分野毎に国が定める目安に沿った計画策定・実績報告が必要となります。
区分 | 事業 | 指標 | 目安となる水準 |
---|---|---|---|
1A | 高炉による製鉄業 (※1) |
水素、廃プラスチック又はバイオマスの導入等の非化石エネルギーへの転換に向けた取組による、2030年度における2013年度比石炭の使用量に係る原単位(石炭の使用量を粗鋼の生産量で除して得た値をいう。)削減割合 | 2%以上 |
1B | 電炉による製鉄業 (※2) |
2030年度における外部調達する電気及び自家発電による電気の使用量に占める非化石エネルギーの割合 | 59%以上 |
2 | セメント製造業 (※3) |
2030年度における焼成工程(原料を高温で焼成し中間製品であるクリンカーを製造する工程)における化石燃料及び非化石燃料の使用量に占める非化石燃料の使用量の割合 | 28%以上 |
3A | 洋紙製造業 | ①主燃料を石炭とするボイラーを有する者 2030年度における2013年度比石炭の使用量の削減割合 ②主燃料を石炭とするボイラーを有しない者 2030年度における外部調達する電気の使用量に占める非化石エネルギーの割合 |
①30%以上 ②59%以上 |
3B | 板紙製造業 | ①主燃料を石炭とするボイラーを有する者 2030年度における2013年度比石炭の使用量の削減割合 ②主燃料を石炭とするボイラーを有しない者 2030年度における外部調達する電気の使用量に占める非化石エネルギーの割合 |
①30%以上 ②59%以上 |
4A | 石油化学系基礎製品製造業 | ①主燃料を石炭とするボイラーを有する者 2030年度における2013年度比石炭の使用量の削減割合 ②主燃料を石炭とするボイラーを有しない者 2030年度における外部調達する電気の使用量に占める非化石エネルギーの割合 |
①30%以上 ②59%以上 |
4B | ソーダ工業 | ①主燃料を石炭とするボイラーを有する者 2030年度における2013年度比石炭の使用量の削減割合 ②主燃料を石炭とするボイラーを有しない者 2030年度における外部調達する電気の使用量に占める非化石エネルギーの割合 |
①30%以上 ②59%以上 |
5 | 自動車製造業 | 2030年度における外部調達する電気及び自家発電による電気の使用量に占める非化石エネルギーの割合 | 59%以上 |
非化石エネルギー転換の目標達成について、使用した電気全体に占める非化石電気の比率は下式で算出されます。
Ⅱ:証書等の非化石エネルギー量
Ⅲ:他社に供給する熱・電気を発生させるために使用した燃料の使用量
非化石エネルギーの使用量は、自家発太陽光やオフサイト型PPAなど「重み付け非化石」に相当する電気は、その使用量を1.2倍して計算を行えます。また、燃料を投じるものを除く再エネ自家発電(太陽光発電、風力発電、地熱発電等)は一次換算係数8.64として再計算した上で1.2倍して算出でき、非化石エネルギーの使用状況の評価が向上します。なお、電力事業者からの買電は、再エネ電力の場合でも1.0倍の評価となっています。
改正省エネ法では、電気需要に対する考え方が「平準化(時間帯や季節ごとの電力需要格差を縮小する)」から「最適化(供給に合わせて需要を柔軟に変更する)」に変化しました。
これまでは夏期/冬期の電気の需要の多い時間帯での需要抑制を促す「電気の需要平準化原単位」でしたが、
再生可能エネルギーの出力抑制や電力需給ひっ迫が増加していることを踏まえ、供給に合わせて電気の需要を変動させる「電気の需要最適化措置」に見直されました。
具体的には下記より評価されます。
改正省エネ法を通じ、2050年カーボンニュートラル目標に向けて非化石エネルギーの導入拡大や、太陽光発電等の供給側の変動に応じて電気の需要の最適化が求められることを踏まえ、エネルギーを使用する事業者さまに対し、エネルギー効率の良い設備、太陽光発電等の非化石電気に資する設備の導入や非化石エネルギーの割合が高い電気・熱の選択、電気需要の最適化に資する自家発電設備や蓄電池の導入が求められています。
Daigasエナジーでは、改正省エネ法対象の事業者さまを含め業務用・工業用のお客さまへ低・脱炭素化を総合的にご支援できるように多くのメーカーとのつながりを活かし、「D-Lineup」という豊富なメニューを準備、ご提供しております。 その中でも今回の改正省エネ法への対応に役立つ太陽光発電・PPAやデマンドレスポンスに関する以下のサービスをご紹介します。再エネ電源の普及拡大、電力系統の安定化など、脱炭素化社会の実現に貢献してまいります。
カーボンニュートラルに関する