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カーボンニュートラルのここが知りたい!バイオマス発電編

「カーボンニュートラルをもっと知りたい」そんな方々に向けて、さまざまな情報をお届けしています。今回のテーマは「バイオマス発電」です。バイオマス発電とは、「木材や動植物などの生物資源(バイオマス)をエネルギー源として発電するシステム」です。CO₂排出量削減や廃棄物の有効利用など、多くのメリットがあります。バイオマスの概要や種類、発電の仕組み、 将来性、メリット・注意点などを知り、バイオマス発電への理解を深めていきましょう。

バイオマス発電とは?カーボンニュートラルのここが知りたい!

1. バイオマス活用の重要性

バイオマスとは、生物資源(bio)の量(mass)を表す概念で、「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」です。

太陽エネルギーを使って水と二酸化炭素から生物が光合成によって生成した有機物であり、私たちのライフサイクルの中で生命と太陽エネルギーがある限り持続的に再生可能な資源です。

なかでも、木材を原料とするバイオマスは、成長・生育の過程で大気中の二酸化炭素を吸収しており、燃焼することで再び二酸化炭素が放出されても、トータルの二酸化炭素量は増減しません。

そのためバイオマスの活用は、現在、日本だけではなく、世界が取り組む「カーボンニュートラル」の実現にも、寄与する技術と考えられています。

なお、日本の一次エネルギー供給における化石燃料の割合は、2019年の段階で84.8%。二酸化炭素を排出する化石燃料に大きく依存しています。

カーボンニュートラル社会を実現するには、化石燃料から太陽光・風力・地熱・中小水力・バイオマスといった再生可能エネルギーにシフトすることが重要です。

バイオマスの熱利用に関しては、政府の宣言を受けて、国内の多くの企業・団体がカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを始めています。例えば、JGA(日本ガス協会)では「カーボンニュートラルチャレンジ2050アクションプラン」において、2050年に都市ガスの最大5%をバイオガス等でまかなうとしています。

2050年ガスのカーボンニュートラル化の実現に向けた姿

カーボンニュートラルを実現するには多くの課題がありますが、解決手段の一つとしてバイオマスを活用したバイオガスの利用が注目されています。

(参照)
『2021—日本が抱えているエネルギー問題』(経済産業省資源エネルギー庁)
『「カーボンニュートラルチャレンジ 2050」アクションプランの策定および「カーボンニュートラル委員会」の設置について』(日本ガス協会)

バイオマスの種類

バイオマス発電に使用する原料(バイオマス)の種類は、大きく3つに分類されます。また、注目したいのは、バイオマスに廃棄物が含まれる点で、これらをエネルギー等で有効活用することで、廃棄物の処理量を削減でき、環境負荷の低減、CO₂排出量の削減が期待できます。

  • ● 乾燥系バイオマス:建築廃材、農業残渣(稲わら等)、製材廃材など
  • ● 湿潤系バイオマス:食品加工廃棄物、家畜排泄物、下水汚泥、し尿、厨芥ごみなど
  • ● その他:セルロース(古紙)、パーム油(やし)、産業食用油など

資源エネルギー庁『バイオマス発電』の図表を参照し作図

※資源エネルギー庁『バイオマス発電』の図表を参照し作図

2. バイオマス発電の仕組み

国立研究開発法人 国立環境研究所『バイオマス発電』の図表を参照し作図

※国立研究開発法人 国立環境研究所『バイオマス発電』の図表を参照し作図

バイオマス発電は、バイオマスから取り出した熱エネルギーを利用して、タービンを回転させて発電する仕組みです。

なお、バイオマスの発電方式は、バイオマスをエネルギー変換する技術の違いごとに、いくつかの種類があります。

バイオマスの発電方式

バイオマスの発電方式には、以下の3つがあります。

  • ● 直接燃焼方式:
    直接燃焼は、石炭や廃棄物の燃焼の場合と同じように、焼却炉を用いて乾燥系バイオマスを燃焼させる技術です。乾燥系バイオマスを燃焼させ、発生した蒸気でタービンを回転させて発電します。バイオマスが直接燃焼に適しており、かつ一般的にある程度の規模が必要になるボイラーと蒸気タービンを組み合わせた発電が選択可能な場合には、直接燃焼が行われます。

  • ● 生物化学的変換方式:
    生物化学的変換技術は、微生物の働きによるメタン発酵で発生するメタンガスを燃料にして、ガスタービン等の回転により、エネルギーを変換します。他の方式と比較して、食品業者や家畜産業者の廃棄物である湿潤系バイオマス(牛・豚・鳥の糞尿、下水汚泥、食品廃棄物など)を有効活用に向いている点が大きな特徴です。

  • ● 熱化学的変換方式:
    熱化学的変換方式は、熱分解反応、ガス化反応、水熱液化(水熱ガス化)などの化学的な方法によりエネルギー変換し、発電します。特に木材が原料の熱分解反応は、いわゆる木炭の製造プロセスとして従来から世界各地で実施されており、現在も途上国におけるメジャーなバイオマスの利用形態です。

(参照)
『環境技術解説』(“ひろがるつながる”環境情報メディア環境展望台)

3. バイオマス発電のメリット・注意点

バイオマス発電のメリット・注意点

バイオマス発電には多くのメリットがある一方で、 留意したい注意点もあります。最後にバイオマス発電のメリット・注意点を確認します。

バイオマス発電のメリット

  • ● カーボンニュートラルなエネルギー源
    バイオマス発電は、火力発電の一種のため、二酸化炭素が発生します。しかし、特に植物由来のバイオマスは、生育時に大気中の二酸化炭素を吸収するため、トータルでは新たに二酸化炭素を増やしません。

  • ● 原料が豊富に存在する
    バイオマスは生物由来の有機物質のため、地球上に豊富に存在します。これにより、継続的なエネルギー供給が可能となります。

  • ● 廃棄物が有効利用できる
    バイオマス発電では、廃棄食材や農業残渣などの有機廃棄物をエネルギー源として利用することが可能です。これにより廃棄物の発生を抑えて、資源を有効活用できます。

  • ● 発電量の調整ができる
    バイオマス発電は、燃料の投入によって発電するため、 発電量の調整が可能です。天候などの自然条件に依存する風力発電・太陽光発電等と比較して、柔軟に発電量が調整でき、安定的な発電が期待できる点は大きなメリットです。

  • ● FIT(固定価格買取制度)の対象
    再生可能エネルギーのバイオマス発電は、一定の期間・価格で電力会社が電力を買い取るFITの対象です。

バイオマス発電の注意点

  • ● コストが変動する
    バイオマスの収集・運搬・管理にはコストがかかる場合があります。また近年は化石燃料の価格が上がることで、バイオマスのニーズが高まるなど、コストが変動する点にも注意が必要です。

  • ● 発電効率が変動する
    バイオマスの種類・品質によって発電効率が変わることがあります。例えば、水分を多く含むバイオマスでは、燃焼効率が低下する可能性が考えられます。

(参照)
『バイオマス発電燃料の持続可能性の論点について』(経済産業省)
『木質バイオマス発電を巡る情勢』(日本木質バイオマスエネルギー協会)
『バイオマス発電ってなに?』(METI Journal)
『再生可能エネルギー技術白書』(NEDO)

4. バイオマス発電の将来性

バイオマス発電の将来性

 資源エネルギー庁の「2030年度におけるエネルギー需給の見通し」によると、2030年度の電源構成比率は、再生可能エネルギーが「36〜38%」、バイオマスが「5%」 とされています。カーボンニュートラルの実現に向けて、バイオマス発電の拡大がますます重要になっています。

バイオマス発電の技術も進展しています。例えば、食品廃棄物であればこれまでバイオマス発電には規模の大きな設備(食品廃棄物処理量:50~100t/1日)やシステムが必要でしたが、比較的小さな規模(食品廃棄物処理量:0.8~3t/1日)の商業施設や自治体でもバイオマス発電に取組める技術がでてきています。大規模なものから小規模なものまで、今後、バイオマス発電導入施設の増加が期待されます。

(参照)
『2030年度におけるエネルギー需給の見通し』(資源エネルギー庁)

バイオマス発電に関する弊社グループの取り組み

Daigasグループは、バイオマス発電事業の拡大に取り組み、再生可能エネルギーの普及を目指しています。

名古屋発電所・名古屋第二発電所では石炭・バイオマス混焼、松阪木質バイオマス発電所では国産材を活用した地産地消型のバイオマス発電事業を展開し、さらなる拡充に取り組んでいます。

直近では2024年3月に、広畑バイオマス発電所を竣工。Daigasガスアンドパワーソリューション株式会社が、九電みらいエナジー株式会社と共同出資し、国内最大クラスの発電容量(約7.5万kW)を実現しました。

(参照)
『Daigasグループのバイオマス発電への取り組み』(Daigasグループ)
『広畑バイオマス発電所の竣工式を行いました』(Daigasグループ)

5. まとめ

  • ●バイオマス発電は、「木材や動植物などの生物資源(バイオマス)をエネルギー源として発電するシステム」で、カーボンニュートラルに寄与する。
  • ●バイオマスの発電方式には、乾燥系バイオマスを直接燃焼させる方法ほか、発酵等で発生させたメタンガスを利用する方法などがある。
  • ●バイオマス発電は、他の再生可能エネルギーと異なり、天候に左右されず、安定した発電が確保できる。また、発電量も柔軟に調整できる。
  • ●バイオマス発電の需要は高まっており、 今後も設備導入・発電量の増加が見込まれる。

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