2023.09.25
カーボンニュートラル社会の実現に向け、国内外でGXの動きが加速しています。日本では「GXリーグ」が発足し、2023年4月から本格始動しました。また、GX関連政策の本格始動を受け、経済産業省の2024年度概算要求額は過去最大規模となっております。(2023年8月31日:経済産業省発表) GXリーグとはどんな組織で、何を目指しているのかについて詳しく紹介します。
GXとは、グリーントランスフォーメーション(Green Transformation)を略したもの。
2020年10月に当時の菅首相が「2050年にカーボンニュートラルを目指す」と宣言したことや、2021年4月に「2030年度の新たな温室効果ガス排出削減目標として、2013年度から46%削減することを目指し、さらに50%の高みに向けて挑戦する」と発表したことを契機に、経済産業省が提唱するようになりました。GXについて、経済産業省は「2050年のカーボンニュートラルや、2030年の国としての温室効果ガス排出削減目標の達成に向けた取り組みを経済の成長の機会と捉え、排出削減と産業競争力の向上の実現に向けて、経済社会システム全体を変革すること」と説明しています。
つまり、GXとは、温室効果ガスの排出をできるだけ少なくし、太陽光や風力、水素などの再生可能エネルギーを活用して、脱炭素を進める取り組み。同時に、そうした取り組みと経済成長を両立させ、社会全体を変革する活動でもあるのです。
GXを推進し、カーボンニュートラル、そして社会全体の変革を実現していくには、企業の積極的な取り組みと、市場の創出が欠かせません。企業がGXの牽引役を果たすためには、GXに取り組む企業同士の横のつながりや、産官学金が垣根を越えて議論、協働する場が必要になってきます。このような考えから構想されたのが「GXリーグ」です。
GXリーグは、2021年2月に経済産業省内の研究会で検討が始まり、翌年2月に「GXリーグ基本構想」が発表されました。基本構想には440社が賛同し、同6月から準備活動がスタート。2023年2月には「GX基本方針」と「GX推進法案」が閣議決定され、4月から本格的な活動を開始しています。GXリーグへの参画企業は679社(2023年1月31日現在)に達し、それらの企業が排出する温室効果ガスは日本全体の4割以上にもなります。
設立にあたって重視されたのが、日本企業の脱炭素の取り組みに対する正当な評価や、評価のための官民連携のルールづくりに寄与することでした。というのも、現在のルールづくりはEUをはじめ海外のNGOやNPO、民間企業連合などが先行していて、このまま欧州のルールが世界標準になると、今後の国際的なビジネスで日本企業が不利になる懸念があったからです。また、国際的なルールや規制が決定した後に、日本企業がいわば「受け身」の形で活動することになってしまうと、CO₂削減貢献効果の高い製品といった日本企業の持つ強みが生かされず、市場獲得が困難になるといった事態も生じかねません。日本企業は、世界に肩を並べて提案していけるようなリーダーシップを持つことが必要で、GXリーグのコンセプトにも「リーダーシップ」が位置づけられています。
GXリーグは、GXに率先して挑戦する企業が脱炭素に貢献しつつ、その取り組みが正しく評価され、企業の成長や競争力向上につながっていく社会づくりを目指す活動なのです。
GXリーグ基本構想では、次の3つの目指すべき柱が設定されています。
①企業が世界に貢献するためのリーダーシップのあり方を示す。
②GXとイノベーションを両立し、いち早く移行の挑戦・実践をした者が、生活者に選ばれ、適切に「儲ける」構造をつくる。
③企業のGX投資が、金融市場、労働市場、市民社会から、応援される仕組みをつくる。
この3つの柱に基づいて、GXリーグでは官民共創による政策形成にチャレンジしています。代表的な活動として、以下のような取り組みがあります。
GX-ETS(※)は、GXリーグにおいて温室効果ガス排出量を取引する市場のこと。企業が排出するCO₂に価格をつけ、排出量の多い企業と少ない企業との間で売買を行う仕組みです。GXリーグの参画企業は、自主的な目標を策定し、削減の取り組みを進めることが求められます。EX-ETSがスタートすると、目標以上に削減できた場合は差分を「超過削減枠」として売ることができ、逆に自主目標を達成できなかった場合は、他社の「超過削減枠」やカーボンクレジットを購入することになります。つまり、排出量によってお金が動くようになり、脱炭素が競争領域に変わるのです。企業経営や生産活動への影響も大きくなっていくと予想されます。
すでに海外では、EUや米国カリフォルニア州、カナダ、中国などでETSが運用されています。海外の仕組みと異なるのは、海外では多くが「義務」になっているのに対し、日本では「自主性」に重きを置いている点。これは、企業が自主的な排出削減目標に向かって取り組むことで、野心的な目標を掲げる企業を増やし、投資や技術開発、削減活動を促進することがねらいです。
GX-ETSは2023年度から第1フェーズ(2023年度〜2025年度)の運用が始まっており、参加企業の取引状況や目標の達成状況については、2023年秋に公開予定の情報開示プラットフォーム「GXダッシュボード」で公表する計画です。
※ETS=Emission Trading Schemeの略。
日本企業が国際的なリーダーシップを発揮するためには、「受け身」でいるのではなく、自らがルールを作り発信していくことが不可欠です。こうした考えから、GXリーグでは将来的な官民でのルール形成を見据えた取り組みの一環として、「GX経営促進ワーキング・グループ」が活動しています。
このワーキング・グループの目的は、日本企業の気候変動への貢献が適切に評価される仕組みを構築すること。現状では、優れた省エネ製品やサービスを開発しても、売れば売るほどScope3(※)の排出量が増えてしまうため、評価が“マイナス”になるという事態が起こっています。しかし、実際には社会全体の温室効果ガス削減につながることから、“プラス”の評価であるべきです。
この矛盾を解消するため、まずはどのような取り組みがプラス評価になるかを整理。そうしたプラスの貢献を「削減貢献量」として数値化し、統一的に評価していくためのガイダンス「気候関連の機会における開示・評価の基本方針」を2023年3月に発表しました。ワーキング・グループでは、このガイダンスを国際社会へ発信し、国内外の機関投資家の企業評価などにも利用されるようにすることも目標にしています。
※Scope3=Scope1(自社の温室効果ガスの直接排出量)とScope2(自社の間接排出量)以外で、原料調達から製造、販売、廃棄までに間接的に排出される温室効果ガスの総計。
GXリーグは発足したばかりで参加企業はまだ限られていますが、GXの取り組みがあらゆる企業へ、そして日本全体へと広がっていかなければ、サステナブルな社会は生まれません。経済産業省の基本方針では、日本がカーボンニュートラルを実現するためには、今後、150兆円を超える官民の投資が必要とされています。巨額の投資の「呼び水」にするために、政府はGX移行債(国債)の発行や排出量取引市場の本格稼働、賦課金導入などさまざまな整備を進め、GX加速化を目指しています。こうした状況の中、企業は、脱炭素の取り組み強化はもちろんのこと、コンプライアンス体制や社員教育の充実など、さまざまな対応を迫られることになります。今後、新しいルールや仕組みが生まれ、義務化されていく可能性もあります。大阪ガスも、前出の「GX経営促進ワーキング・グループ」のメンバーとしてGXリーグに参画しており、日本企業の製品やサービスによる排出削減等、気候変動に対して日本企業が貢献する機会が適切に評価されるよう、ルール形成の検討・議論を行っています。
企業は、GXリーグの動向を含め情報収集にも気を配り、的確に対応していく必要があるといえます。
そうはいっても、さまざまな経営課題を抱える中で、企業が取り組むことは多く、脱炭素といっても何から実行に移すべきか、自社に必要なものは何かといったことに悩むかもしれません。排出削減についても、再生可能エネルギーへの切り替え、原材料や製造工程の見直し、排出量の見える化など、多くの対策があり、何から手をつけていいかわからずにいる企業も少なくないのではないでしょうか。
GXリーグの活動は先進的すぎると感じられるかもしれませんが、事業規模や取り組みの進み具合にかかわらず大切なのは、自社の課題や生み出せる価値を見極め、できることから取り組んでいくこと。GXリーグが目指す「企業努力が正しく評価される社会」へと向かえば、脱炭素が企業成長のチャンスにもなり得るのです。
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