コラム

2026.10.26

「グリーンウォッシュ」を防ぐには?企業に求められる環境表示のポイント

「グリーンウォッシュ」を防ぐには?企業に求められる環境表示のポイント

「環境にやさしい」「サステナブル」「カーボンニュートラル」――企業の環境への取り組みを伝える表現は多様化しています。一方で、実態以上に環境に良い印象を与える「グリーンウォッシュ」への目は厳しくなってきています。EUでは2024年、環境表示などの規制を強化する指令を採択し、2026年9月から適用されます。日本でも同年3月、「環境表示ガイドライン」が改定されました。いま企業には、環境に良いことを「伝える」だけでなく、何が、どの程度、どんな根拠で環境に良いのかを、消費者に誤解なく伝えることが求められています。それぞれの規制や判決、グリーンウォッシュに陥りやすい表現を見ながら、企業が環境への取り組みを正確かつ適切に伝えるためのポイントを探っていきましょう。

1. グリーンウォッシュの概念とその背景

1)グリーンウォッシュとは?

グリーンウォッシュとは、「green」(環境に配慮した)と「whitewash」(取り繕う)を組み合わせた言葉で、実態を伴わない、あるいは誇張したり曖昧な環境配慮の表現によって、環境に配慮しているように見せる行為を指します。ここで注意したいのは、その表現が必ずしもごまかしや嘘ではなくても、情報の伝え方や示す範囲によって、グリーンウォッシュと受け取られる可能性があることです。

2)グリーンウォッシュが注目される背景

環境配慮が企業価値の一つに

・以前は、環境対策は企業のCSR活動として捉えられることがありましたが、気候変動や資源循環、生物多様性などへの関心が高まり、「環境に配慮している企業・商品であること」そのものが、企業価値や商品価値の一部として重視されるようになってきました。

・また、ESG投資やサステナブルファイナンスの拡大によって、環境情報は消費者だけでなく投資家や金融機関にとっても重要な判断材料になっています。企業のCO₂排出量、削減目標、再生可能エネルギーの利用、ネットゼロへの移行計画などが、企業評価や投融資判断に関係するようになっています。

「環境に良い」の基準がなかった

・一方で、「環境に良い」という表現について、統一的な規定や基準は十分に整備されていませんでした。一言で「環境に良い」と言ってもどの側面について、どの範囲を、何と比較して、どのような方法で評価したのかが明確でありませんでした。

・欧州委員会による2020年の調査では、調査対象となった環境表現の53%が「曖昧、誤解を招く、根拠がない」ものとされ、40%には裏付けとなる証拠がありませんでした。また、EU域内には230以上の環境ラベルが存在するとされ、消費者が信頼できる表示を見分けることが難しくなっていました。

(参照)Green claims - Environment -(欧州委員会(European Commission))

2. 世界で表現の規制が強化

1)EU

EUは企業が自社製品やサービスの環境面での利点について誤解を招くような主張を行うことを阻止するための新たな基準を設けました。これが2024年に採択された指令、「グリーン・トランジションに向けた消費者のエンパワーメントに関する指令(Directive (EU) 2024/825)」(以下、EU指令)です。これは、既存の「不公正取引慣行指令(UCPD)」などを改正するものです。

これにより、加盟国は2026年3月27日までに国内法に反映し、同年9月27日から事業者に対し適用されます。EU域内で商品・サービスを販売する日本企業も、加盟国の国内法を通じて対応を求められる可能性があります。

●EU指令で禁止される主な表示・行為

・根拠なき抽象的・不明確な主張
「environmentally friendly」「eco」「green」「sustainable」など、あいまいに環境への配慮を一般的に訴える表現は、その主張に関連する環境性能を示す根拠が必要です。

・オフセットを根拠とした「カーボンニュートラル」などの表示
「気候中立」「カーボンニュートラル」などの製品表示について、製品のバリューチェーン外で行った排出オフセットを根拠として、製品自体の温室効果ガス排出が実質ゼロになったかのように示すことは禁止されています。

・未検証の自主サステナビリティラベル
第三者による検証を伴う認証スキームに基づかないものや、公的機関が設定していないものの表示を原則として禁止します。民間のラベルについては、認証基準や手続きが公開され、独立した第三者が適合性を客観的に確認するなど、透明性や信頼性を備えた認証スキームであることが求められます。

・環境面での一部の特徴を、製品や企業全体の特徴であるかのように表示すること
例えば、包装だけに再生材を使用しているにもかかわらず、製品全体が再生材でできているように表示することや、一部の事業所だけで再生可能エネルギーを利用しているにもかかわらず、企業全体が再エネを利用しているように見せることが対象となります。

・耐久性や修理可能性の主張
通常の使用条件での耐久性を偽って表示したり、実際には修理できない製品を「修理可能」と表示したりする行為などが禁止対象となります。

(参照) EUR-Lex - Official Journal of the European Union(欧州連合出版局(Publications Office of the European Union))

●EU指令による影響

この指令は、消費者向けのあらゆる商業活動を対象としており、パッケージだけでなく、広告やウェブサイト、オンライン販売画面なども対象となります。
指令違反に対する制裁は加盟国が国内法で定めます。加盟国には、違反の重大性などに応じて、効果的かつ比例的で、抑止力のある制裁を設けることが求められています。

2)その他の国でのグリーンウォッシュ規制

グリーンウォッシュへの規制はEUにとどまりません。英国では消費者保護法に基づき、競争・市場庁(CMA)が環境表示に関する「Green Claims Code」を策定しています。豪州でも消費者法の下で、虚偽・誤解を招く環境主張を規制しています。フランスでは2021年の「気候・レジリエンス法」により、さらに踏み込み、「カーボンニュートラル」といった表示について、排出量などの情報開示を法律で求めています。各国で制度は異なるものの、「環境に良い」と主張するなら、その根拠を示すことを企業に求める方向は共通しています。

3. 日本「環境表示ガイドライン」の改定

グリーンウォッシュに対する法規制がグローバルで強化される中、日本でも環境表示に関する網羅的なガイドラインである「環境表示ガイドライン」(環境省)が、2026年3月末に13年ぶりに改定されました。

1)「環境表示ガイドライン」の基本項目

①あいまいな表現や環境主張は行わないこと
②環境主張の内容に説明文を付けること
③製品のライフサイクル全体を考慮すること
④環境主張の検証に必要なデータおよび評価方法が提供可能で、情報にアクセスが可能であること
⑤製品または工程における比較主張はLCA評価(ライフサイクルアセスメント:製品の原料調達から廃棄までの環境負荷評価)、数値等により適切に行うこと

【5つの基本項目】

①あいまいな表現や環境主張は行わないこと

単独で使用できない表現と望ましい表現例

②環境主張の内容に説明文を付けること

説明文の具体的な掲示例

③製品のライフサイクル全体を考慮すること

主張しようとする環境改善が、重大なトレードオフをもたらさないか確認することが望ましい。バイオマスプラスチックの使用とトレードオフ例の図解

④環境主張の検証に必要なデータ及び評価方法が提供可能で、情報にアクセスが可能であること

消費者等が、環境主張を裏付けるデータや評価方法に、容易にアクセスできることが重要

⑤製品又は工程における比較主張はLCA評価、数値等により適切になされていること

2)ガイドラインの対象

「景品表示法」が製品・サービスのみを対象とするのに対し、同ガイドラインは、これに加えて、商品・サービスの取引に直接関係しない環境表示も対象としています。例えば、事業活動全体に関する表示、イメージ広告、企業姿勢のPRなどです。なお、同ガイドラインには法的拘束力はありません。

4. 問題になりそうな表現の6分類

英金融シンクタンクのプラネット・トラッカーは2023年、報告書「The Greenwashing Hydra」を発表し、グリーンウォッシュに陥りやすいコミュニケーション上のパターンを6種類に分類整理しました。

分類 どういう手法か/落とし穴 例えば、こんなケース
①Greencrowding(グリーンクラウディング) 多くの企業や団体の取り組みに紛れ込むことで、自社への注目を避け、不都合な事実が明らかになるのを回避する方法。
→ 「みんなでやっています」で個々の責任を見えにくくしていないか
「業界100社でプラスチック問題に取り組みます」と企業連合をつくり、大々的に発表する。しかし、連合としての具体的な削減目標は曖昧で、個々の企業も自社のプラスチック使用量をほとんど減らしていない
②Greenlighting
(グリーンライティング)
環境に良い一面だけをスポットライトのように強調し、別の環境負荷から目をそらす方法
→ 「良いところ」だけを強調していないか
「再エネ100%の工場が完成」と大きく宣伝。一方で、会社全体では化石燃料を大量に使用していることや、別の事業で排出量が増えていることには触れない
③Greenshifting
(グリーンシフティング)
本来、企業側が負うべき環境負荷の責任を、消費者などに転嫁する方法
→ 環境負荷の責任を消費者に転嫁していないか
「温暖化を止めるには、消費者一人ひとりが省エネを」と呼び掛ける一方、自社の製品製造やサプライチェーンの排出削減についてはほとんど説明しない
④Greenlabelling
(グリーンラベリング)
「地球にやさしい」「サステナブル」など、環境配慮を示すラベルや表現によって、実際以上に環境に良い印象を与える方法
→ 「エコ」「サステナブル」などの言葉だけで環境性能を示していないか
「環境にやさしい素材を使用」「地球に優しい商品」と表示しているが、何がどの程度環境に良いのか、比較対象や根拠が示されていない
⑤Greenrinsing
(グリーンリンシング)
環境目標を達成する前に、目標の数値や期限を変更する
→ 達成できそうになくなるたびに目標を変更していないか
「2030年までにCO₂排出量50%削減」と宣言したものの、達成が難しくなると「2035年までに40%削減」に変更。さらに達成できなくなると、再び目標を変更する
⑥Greenhushing
(グリーンハッシング)
持続可能性に関する取り組みや実績について、意図的に公表を控えたり、過小に伝えたりする方法
→環境に関する重要な情報を意図的に隠していないか
実際には再エネ導入や排出削減を進めているのに、投資家やNGOから厳しく評価されることを避けるため、成果をほとんど公表しない

(参照) Greenwashing growing increasingly sophisticated, says Planet Tracker(Planet Tracker)

5. グリーンウォッシュ判決の実例

①KLM(オランダ)――「持続可能な航空」の印象を与えた広告

2019年にオランダ航空大手KLMは「Fly Responsibly(責任ある航行)」キャンペーンで、持続可能な航空を目指す取り組みをPRしていました。その中で、「Join us in creating a more sustainable future(私たちと一緒に、より持続可能な未来を創りましょう)」という広告を掲載。空や水、山を背景に子どもがブランコに乗るイメージと組み合わせ、KLMの航空サービスを利用することで環境面の利益が得られるような印象を与えていました。

また、広告ではSAF(持続可能な航空燃料)や森林再生などの取り組みについて、航空による環境負荷を軽減する効果を訴えていました。しかし、アムステルダム地方裁判所は2024年3月、19の広告表現のうち15について、消費者に誤解を与えるとして違法と確定しました。

裁判所が問題視したのは主に2点です。
「より持続可能な未来」のような曖昧で一般的な環境主張
・何が、どの程度、どのように環境改善につながるのか具体的ではない。
・広告のビジュアルも、環境上のメリットが得られるような印象を強めていた。

SAFや森林再生などの効果を実際以上に大きく見せたこと
・これらの取り組みには一定の削減効果があるものの、当時の航空による環境負荷全体に対する効果は限定的だった。それにもかかわらず、KLMは航空そのものが持続可能になるようなイメージを与えたと判断された。

この事例はPlanet Trackerの「Greenlighting(一つの良い活動を強調する)」とも言えます。

(参照) 【ESG訴訟ブログ】KLMオランダ航空に対するグリーンウォッシュ判決の紹介(TMI総合法律事務所外国法共同事業)

②HSBC(英国)――「植林」「1兆ドルの投融資」を強調

2021年、HSBCは英国のバス停に、「顧客がネットゼロへの移行を果たせるよう、世界中で最大1兆ドルの融資・投資を提供することを目指している」、また「生涯で125万トンの炭素を固定する200万本の植樹を支援している」といった広告を掲載しました。

しかし、英国広告基準局(ASA)は2022年、これらの広告がHSBCの環境への貢献を強調する一方、同行が同時に石油・ガスなど温室効果ガスを大量に排出する産業にも多額の資金を提供しているという重要な情報を示していなかったことを問題視しました。

HSBCは、詳細な気候変動対策はウェブサイトで公開しており、広告は具体的な取り組みを紹介したものだと主張しましたが、ASAは、広告そのものに重要な情報が欠けていれば、消費者に誤った印象を与えると判断。問題となった広告の再掲載を禁止し、今後の環境広告では、温室効果ガス排出への関与など重要な情報を省略しないよう求めました。

この事例では、植林や投融資という情報自体が虚偽だったわけではありませんが、それだけを示すことで、企業の環境負荷の全体像が見えにくくなっていました。こちらも「Greenlighting」の事例と言えます。

(参照) ASA Ruling on HSBC UK Bank plc(HSBC UK Bank plc(英国HSBC銀行))

③ドイツ・Katjes――「気候中立」の実現方法を明確に説明

菓子メーカーのKatjesは、2021年から自社製品について、「2021年から、当社のすべての製品を気候中立で生産している」という趣旨の広告を掲載しました。
しかし、実際の「気候中立」は、排出削減だけでなく、外部の気候保護プロジェクトへの投資などによって排出量をオフセットすることで実現していました。

ドイツ連邦通常裁判所は2024年、「気候中立」という表現は、排出削減によるものなのか、オフセットによるものなのかを消費者が判断できるよう、広告内で明確に説明する必要があると判断。Katjesが広告に掲載していたウェブサイトへのリンクやQRコードだけでは、十分な説明とは認められませんでした。

この判決は、オフセットの利用そのものを問題としたものではありません。環境価値をどのような方法で実現したのかを明確に伝え、消費者に誤解を与えないことが重要だという点にポイントがあります。 EU指令でも、製品のバリューチェーン外での排出オフセットを根拠に、製品が「気候中立」などであると訴求することは認められていません。一方、カーボンクレジットなどの環境プロジェクトへの投資について、誤解を招かない形で情報発信することまで禁止しているわけではありません。

(参照) New landmark decision on greenwashing in Germany(Freshfields Bruckhaus Deringer LLP)

6. 企業がグリーンウォッシュを避けるための「5つのチェックポイント」

環境省「環境表示ガイドライン」やEUグリーン・トランジション指令の考え方を踏まえると、企業が環境に関する情報を発信する際には、次の5点をチェックすることが重要です。

①「環境にやさしい」だけで終わらせない

「何が」「どの程度」改善されたのかを明確にすることが重要です。 例えば、「環境にやさしい商品」とだけ表示するのではなく、「従来製品と比較して、製造時のCO₂排出量を30%削減」のように、何を対象とした、どのような環境面での改善なのかを具体的に示します。その主張を裏付ける根拠や説明を、消費者が確認しやすい位置に示すことも重要です。EU指令でも、根拠のない抽象的・不明確な環境主張は規制の対象となります。

②「良い面」だけを切り取らない

一部の製品・工場・事業だけの成果を、企業全体の成果のように見せていないか、広告の写真やデザインを含めて、実際以上に環境に良い印象を与えていないか、などをチェックします。環境面で優れた一部分だけを強調する一方で、環境負荷の大きい側面について説明していない場合、消費者に企業や製品全体について誤った印象を与える可能性があります。

③「カーボンニュートラル」「気候中立」は、何によって実現したのかを確認する

「カーボンニュートラル」「気候中立」といった表示をする場合は、排出量を実際に削減したのか、それともカーボンクレジットなどによるオフセットを利用したのかを明確にする必要があります。 EU指令では、企業がカーボンクレジットを購入したり、広告することは可能ですが、それによって「その製品自体の環境負荷がゼロになった」と受け取られる表示は認められません。

④目標・ラベル・第三者評価は「継続性」と「検証可能性」を確認する

環境目標を達成する前に都合よく目標を変更していないか、「○○認証」「サステナブル認証」などのラベルに、明確な基準や第三者による検証の仕組みがあるか。業界団体や企業連合への参加だけを、環境対策の実績であるかのように見せていないか。さらに、環境情報を意図的に隠したり、過小に伝えたりして、外部からの検証を難しくしていないか――といった点を確認します。 特に環境ラベルについては、EU指令では公的機関が設定したラベル、または一定の要件を満たす認証スキームに基づかないサステナビリティラベルの表示が禁止されます。

⑤ライフサイクルで考える

日本の「環境表示ガイドライン」では、製品やサービスの環境面について比較表示を行う場合、原材料や製造工程など一部分だけを切り取るのではなく、製品のライフサイクル全体を考慮することを求めています。また、LCA評価や数値など、比較の根拠を適切に示すことも重要です。

7. まとめ

これまで何気なく使っていた「環境配慮」「エコ」といった表現も、その根拠や比較対象などを明確に示すことが求められています。重要なのは「うそをつかなければいい」ではないことです。グリーンウォッシュ対策は、「うそをつかない」から「誤解させない」へと、より慎重な情報発信が求められるようになっています。つまり、企業が実際に環境対策をしているかどうかだけでなく、何を対象にした主張なのか、どの程度の効果なのか、排出削減なのかオフセットなのか、その根拠を第三者が検証できるのかまで、できるだけ明確に示すことが重要です。そのためにも、製品やサービスに関わる環境データを日頃から整備しておくことが必要になります。環境対策をしていることと、環境負荷が小さいことは同義ではないことを念頭に、「根拠を示して、分かるように伝える」ことで、自社の環境への取り組みをしっかり発信していきましょう。

箕輪 弥生(みのわ やよい)
このコラムの著者

箕輪 弥生(みのわ やよい)

環境ライター・ジャーナリスト
NPO法人「そらべあ基金」理事

環境教育から企業の脱炭素、循環型ライフスタイルまで幅広いテーマで環境分野の記事や書籍の執筆・編集を行う。NPO法人「そらべあ基金」では子供たちへの環境教育や自然エネルギーの普及啓発活動に関わる。個人的にも太陽熱や雨水を使ったエコハウスに住む。著書に「地球のために今日から始めるエコシフト15」文化出版局、「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」・「環境生活のススメ」飛鳥新社 他。日本環境ジャーナリストの会(JFEJ)会員。また、2015年〜2018年「マイ大阪ガス」で「世界の省エネ」コラムも連載。

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