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転機を迎えた再生可能エネルギー

日本における再生可能エネルギーは、一つの転機に直面している。東日本大震災による電力不足を教訓に、2012年7月1日に、再生可能エネルギーの普及を促進する固定価格買取制度(FIT:フィード・イン・タリフ)が導入されて5年が経過する。FITは再生可能エネルギーで作られた電気を、15〜20年間にわたり高値で買い取ることで再生可能エネルギーの普及をはかる制度で、世界的にも広く実施されている。同制度によりわが国ではこの5年間に、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーの発電能力は3倍近くも増加している。
ただ、いくつかの課題も挙げられる。第1に発電コストが割高で出力変動が激しいものの、環境影響評価(アセスメント)の負担が軽く設置が容易であるために、電源が太陽光発電に集中したこと。(*)第2に電気の買取価格が高めに設定されたため、市場競争による発電コストの低減が進まず、世界の再生可能エネルギーと比較して、コスト競争力において大きく遅れをとっていること。第3に電気の買取原資が毎月の電気料金に賦課金として上乗せされるため、2017年度の毎月の賦課金は標準家庭で700円近くに増加し、2017年度の買取総額も2兆円に達していること。第4に太陽光発電、風力発電は、季節、天候による出力変動が激しいことから、送電線の拡充、補助電源、蓄電池等のバックアップが必要で、その負担を誰が行うかという課題が発生すること、である。そのため、政府は買取総額の急増を抑制するために、太陽光発電の1kWh当たりの買取価格を、2012年度の40円(税抜き)から段階的に引き下げており、2017年度は21円(税抜き)となっている他、風力発電についても2017年度から初めて買取価格の引き下げを実施した。
2017年11月時点の状況を見ると、買取価格の引き下げにより、太陽光発電の新規開発は以前のような勢いを失ってきている。そのため今後は、太陽光発電に代わって風力発電、バイオマス発電、マイクロ水力発電、地熱発電等の増加が期待されている。ただ、世界的に見れば、太陽光発電の発電コストは普及による量産効果と価格競争から急速に低下しており、「2018年には太陽光発電の発電コストが、石炭火力発電の発電コストを下回る」という見方もでている。

(*)FITにおける設備認定量は、日本の総発電能力の半分近くに相当する1億514万kWで、そのうち太陽光発電が8割の8,454万kWを占めている。(2017年3月末時点)

国の支援に頼らない自立できるエネルギーへ

これまで再生可能エネルギーは、FITで保護され普及に成功してきたが、今は、炭酸ガス排出削減と国民負担軽減の両立をどのようにはかるかという時期を迎えている。日本の場合、政府の指針で2030年度の電源構成は、発電量の22〜24%を再生可能エネルギーが担うと示されている。内訳は、太陽光発電が7.9%、風力発電が1.7%、バイオマス発電が3.7〜4.6%、地熱発電が1.0〜1.1%となっており、このうち太陽光発電、風力発電、バイオマス発電については目標達成が可能だが、地熱発電の開発は国立公園内の規制、温泉業者の反対等があり、スケジュール通りに行われていない。
2030年度における日本の総発電量は、約1兆kWhとされる。そのうち30%程度を再生可能エネルギーが占めるとなると、3,000億kWhにあたる。再生可能エネルギーの平均稼働率を20%程度とすると、1億7,000万kWhに達する太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーの設置が必要となる。
今後もパリ協定を順守するために、一段と炭酸ガス排出量の削減が求められるなか、低炭素社会の切り札である再生可能エネルギーの役割は一段と重要性を増している。他方、日本は再生可能エネルギーの高コストという大問題を抱えており、それを解決するためには開発規制緩和、アセスメント手続きの簡略化、製品コストの低減、設置費用の引き下げ等、世界の低コスト化への流れに追いつくことが必要となっている。
再生可能エネルギーは、FITによる政策的支援により伸びる時期から、経済的に自立するエネルギーに成長する時期に入っているのである。

エネルギー
よもやま話

エネルギー業界の2018年展望

2018年は電力全面自由化から3年目、ガス事業全面自由化から2年目を迎える。垣根を越えた電力企業と都市ガス企業の熾烈な争奪戦は本格化しているが、今年は今まで以上に、自由化の真価を問われる年になりそうだ。
業界毎の課題として、都市ガス業界では米国のシェール・ガスを原料としたLNG輸入が本格化することから、如何に機動的・安定的に割安なLNGを入手できるかが、顧客へのサービス向上と業績の安定につながっていく。さらに、アジア諸国におけるLNG需要の増加を受けて、官民合わせて総額100億ドル(1兆1,400億円)の資金支援、人材育成が経済産業省から打ち出されたことから、日本とアジアのLNGビジネスをどう業界の成長に取り込むかが問われてくる。
電力業界では、経営安定化のための原子力発電所の再稼働が挙げられるが、原子力規制委員会から再稼働適合の審査結果が出された発電所のいくつかについては、地元の同意を含め再稼働が見通せない状況にある。
石油業界では過剰な石油精製能力の削減、JXTGエネルギーというガリバー企業の誕生により、末端のガソリン・スタンドにおける安売り競争が沈静化、販売マージンが改善傾向にあり、業績が上向く可能性が高くなっている。
2018年は都市ガス業界、電力業界、石油業界にとって、原油価格の回復基調にどう対応するかが問われる1年となる。同時に地球温暖化対策としてのパリ協定の順守、電気自動車の将来的な普及による脱炭酸ガスの流れに対して、長期的な経営戦略の構築が求められる重要な年となるであろう。