メルマガ会員受付中

お問い合わせ

ZEB認証の具体的な方法とは?評価方法や有効な省エネ・創エネ対策について解説!

2025.1.8

ZEB認証の具体的な方法とは?評価方法や有効な省エネ・創エネ対策について解説!

建築物の省エネ・創エネを推進するZEB認証。2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、ZEB認証の取得数はここ数年で増加しています。本記事では、ZEBを検討する方に向けて、ZEBの計算・評価方法や、実現プロセスについて解説します。

1. ZEBとは

ZEBとは、建築物の省エネ・創エネを共に行うことにより、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロにすることを目指した建築物で、ZEBの実現・普及に向けて4段階のZEBシリーズが定義されています。ZEBの評価は、省エネルギー性能の評価及び表示を的確に実施することを目的としています。

ZEBの概要については、こちらの記事をご覧ください。

2. ZEBの計算・評価方法

ZEBの判定は、設計時にWebプログラムにより算出されるBEIという数値で行います。Webプログラムはエネルギー消費性能計算プログラムと呼ばれており、建築物省エネ法で規定された非住宅建築物の省エネ基準への適合性を判定するためのツールです。

BEIはBuilding Energy Indexの略称で、その建築物が「標準となる仕様を採用した場合のエネルギー消費量に対して、設計仕様のエネルギー消費量をどれくらい削減できるか」を示す値です。BEIは以下の数式で計算されます。

基準一次エネルギー消費量とは、設備毎、地域毎、室用途毎に基準として定められる標準的な一次エネルギー消費量のことで、設計一次エネルギー消費量とは、実際の建築物の設計仕様条件を基に算定した一次エネルギー消費量を表しています。しかし、標準的な使用条件を設定することが困難な部分や、常時使用されることが想定されないものに関しては、ZEB評価の対象外となります。

評価対象外の室(例):
①物品等を生産するための室及び設備
②工場等における物品を製造するための室や、サービスを供給する(建築物外に電気や熱等を提供する、演算等の高度な機能を提供する、特殊な環境を維持する必要がある等)ための機械設備が設置される室

3. ZEB実現に向けた設計プロセス・要素技術

ZEB仕様の建築物を設計する際は、①パッシブデザインと②アクティブデザインの2つの考え方が重要になります。また、エネルギーマネジメント等の運用改善はZEB認定の評価には含まれませんが、建築物を長く適切に運用するために重要です。

①パッシブデザイン…周辺環境や室内環境を適正に保ち、建物の負荷を抑制します。その上で、太陽光、風力等の自然エネルギーを積極的に活用し、上手に制御するデザイン手法が求められます。

②アクティブデザイン…高効率な設備システムを導入するとともに、未利用エネルギーの活用を検討し、エネルギー消費量を最小限とした上で、再生可能エネルギーを導入する設計手法です。例えば、高効率な空調設備や照明システムの導入、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーなどが該当します。

具体的には、①パッシブデザインとして、建物躯体の高断熱化や自然エネルギーの活用により建物にかかる負荷を抑制した上で、②アクティブデザインとして、省エネルギー技術を導入します。具体的には、徹底的な省エネルギーを実現するとともに、太陽光エネルギー等の再生可能エネルギーを導入して、可能な限りネット・ゼロに近づけます。これが、ZEB実現への一般的なプロセスとなります。

2022年の実績を基に、国土交通省国土技術政策総合研究所により、建物のBEIと設備別の評価が行われました。この評価は、届け出や適合判定の申請があった物件のWebプログラムの入出力データを基に実施されています。そのうち、詳細な評価方法である「標準入力法」で得られた評価結果のうち、物件数が大きい6地域の分布を示したものが以下になります。

BEIの平均値は約0.5であり、全設備の中で照明設備のBEIが小さく、これが建物全体のBEIを押し下げています。空調、換気については、中央値は小さいものの平均値は大きく、すそ野が広い分布となっており、給湯設備についてはBEIが0.8~1.2と2.0~2.5の2グループに分かれています(なお、大容量の太陽光発電設備等が設置されることによりBEIが負となることもあります)。

<設備別のBEI分布>

設備別のBEI分布

図3.1.6 BEIの分布(標準入力法、6地域)

(参照)
『国土技術政策総合研究所 研究資料』(NILIM)

また、下の表の通り、各用途の建築物における設備別のエネルギー消費量の割合は、工場等を除く全用途において空調設備、照明設備のエネルギー消費の割合が高く、特に空調の割合が最も高くなっています。このデータから、ZEBを達成するためには特に空調用及び照明用のエネルギー消費量の削減が重要であることが分かります。

ZEBを達成するために、特に重要な空調用及び照明用のエネルギー消費量の削減方法について説明します。

空調エネルギーの削減

空調エネルギーの削減は、Webプログラムの評価上、有効な対策で、外皮性能向上による負荷抑制、高効率機採用及び台数制御システムの採用等が挙げられます。また、ビル用マルチエアコン等の空調熱源は、負荷率が低いと効率が低下するという機械特性がありますが、その点はWebプログラムで考慮されています。

一般的にどの用途建物においても、年間を通じて低負荷の時間帯が長くなる傾向があるため、能力をサイズダウンして、機械の負荷率を高めることが高効率運転を行うために有効です。

空調エネルギー削減の重要ポイント

空調熱負荷を下げる 建築計画の工夫、外皮性能向上、外気冷房採用等
高効率熱源を採用する 高効率機(高COP機)の採用
定格容量を下げる 空調定格能力のサイズダウン
(内部発熱等の設計条件の見直し、設計余裕度低減、全熱交換器導入等)
複数熱源を導入し、台数制御を行う
ポンプや空調機での省エネ制御 ポンプ:台数制御、変流量制御の採用
空調機:変風量制御の採用

空調定格能力は、年間ピーク負荷を設計の上、それを賄える能力が選定されますが、運用段階において内部発熱(PC・照明器具、人員密度)の不確実性があるため安全側の設計(=過大な能力)になりがちです。サイズダウンのためには、負荷計測等により能力と実績の乖離を確認の上、不確実性を見込んだ能力選定が重要となります。

空調用のエネルギーをさらに削減するためには、コージェネレーション(以下、コージェネ)システムや太陽熱等の未利用エネルギーを活用するシステムの導入も有効な手段です。

コージェネは、発電の際に発生する排熱を利用することで、エネルギー効率を高めるシステムです。これにより、建物内の給湯や冷暖房のエネルギー消費を削減すると共に、エネルギー効率を上げることが可能です。省エネ性能評価において、コージェネは太陽光発電設備と同様に「エネルギー利用効率化設備」として評価されます。このため、建物全体のエネルギー消費量の計算上、コージェネ導入によるエネルギー削減量はマイナスカウントされます。

照明エネルギーの削減

Webプログラムの評価上、照明エネルギー削減に有効な対策として、照度の適正化及びLED高効率型の採用、明るさ検知制御等の照明制御の採用が挙げられます。従来のHF照明等が標準値になっていることから、高効率LEDを採用するだけで、BEI/L0.5を下回るケースもあり、有用です。

また、照明の消費電力を減らすことは発熱量の抑制にもつながるため、結果として空調負荷を減らし、空調能力のサイズダウンや空調エネルギーの削減にもつながるのです。

重要なポイント

照度適正化 ・近年のPC普及等で、紙媒体の作業とは異なる照度環境に
設定照度を適正化することで照明エネルギー消費量を抑制
高効率照明 LED照明の採用(蛍光灯照明器具に比べ、消費電力は約50~60%)
・光源寿命は約3.3倍であり、ランニングコストも大幅に削減
照明制御 タイムスケジュールによる点灯・消灯
明るさセンサーによる自動調光制御
人感センサーによる自動調光・点灯・消灯制御 等

4. ガスZEBとは メリットと将来展望

ここまでは建築物のエネルギー消費に注目し、比重の高いエネルギーをどう省エネするかについて解説しました。ここからは、ガス設備を活用することで、省エネルギーに加え各種メリットのある「ガスZEB」について紹介します。

全国では、すでにGHP等のガス空調やガスコージェネを活用してZEBを実現した「ガスZEB」が続々と増えています。新築のZEBだけでなく、老朽化した既存のガス設備を更新する際に建物の省エネ改修と組み合わせてZEB化改修した事例もあります。

「ガスZEB」には主に、「節電対策」「排熱の有効利用」「レジリエンス性能向上」の3つのメリットがあります。それぞれのメリットについて解説します。

「ガスZEB」のメリット①:節電対策

夏季や冬季に電力需要がひっ迫する原因の一つに、空調稼働による電力消費の増大が挙げられます。ガスを利用したガス空調やガスコージェネを導入することで空調用の電力使用量を大幅に削減することができ、節電に大きく貢献します。

また、ガスコージェネに太陽光発電設備と蓄電池を組み合わせれば、昼間に発電した余剰電力を蓄電して夜間に使用できるため、電力需給のバランスを取ることが可能になります。

「ガスZEB」のメリット②:排熱の有効利用

ガスコージェネは、ガスによる発電時の排熱を利用して、給湯用のエネルギー消費量を削減するなど、暖房の面のみならず、「排熱投入型ナチュラルチラー(ジェネリンク)」との組み合せにより冷房のエネルギー削減にも寄与し、さらなる省エネを推進することができます。

省エネ性能評価において、コージェネは太陽光発電設備と同様に「エネルギー利用効率化設備」として評価されます。このため、建物全体のエネルギー消費量の計算上、コージェネによる消費エネルギー削減量はマイナスカウントされます。

「ガスZEB」のメリット③:レジリエンス性能向上

近年急増する台風や豪雨による風水害に対し、レジリエンス性能を問われることが多くなりました。ガスは他のインフラに比べて供給支障件数が少なく、災害時におけるガスのエネルギー供給継続性が高いことが改めて注目されています。

「ガスZEB」の将来展望:e-メタンによるカーボンニュートラル化

e-メタンは、大気中や排気ガス等に含まれるCO₂と水素を原料にして作られるメタンで、燃焼しても大気中のCO₂濃度が変化しないため環境に優しいメタンです。このe-メタンの社会実装により「ガスZEB」のガス機器で消費する都市ガスのカーボンニュートラル化が実現します。

e-メタンは都市ガスとほぼ同じ成分であり、既存インフラや既存燃焼機器がそのまま利用できるため、スムーズな移行が可能です。

5. ZEBプランナー制度

以上の通り、空調や照明からガスZEBまで、省エネ対策として検討すべき対象は多岐にわたり、ZEB達成には一定のノウハウが必要になります。

ZEBの案件形成を促進するため、ZEB等の知見を有する設計会社、コンサルティング企業等を「ZEBプランナー」として登録し、建物オーナーが相談できる仕組みがあります。「ZEBプランナー」とは、一般に向けたZEB化実現のための相談窓口を有し、業務支援(建築設計、その他設計、コンサルティング等)を行い、その活動を公表する事業者のことを指し、一般社団法人環境共創イニシアチブにより公募・登録されます。

Daigasエナジーは「ZEBプランナー」のコンサルティング登録企業であり、ZEB実現に向けた業務支援を実施しています。DaigasグループにはZEBプランナー登録会社が多数ございますので、ZEB認証取得を検討される際はぜひご相談ください。

D-lineupはこちら

脱炭素のヒント!?になるお役立ちコンテンツ

ぐぐっと!カーボンニュートラル

カーボンニュートラルに関する無料オンラインセミナーやコラム記事、お客さまの導入事例などの最新情報をいち早くお届けいたします。(登録無料)

PAGE TOP