企業経営において、脱炭素化に向けた取り組みは、努力目標から“やって当たり前”のものになりつつあります。サプライチェーン全体でのGXを目指す流れの中で、中小企業に対しても削減計画や省エネ投資が求められるようになり、対応の遅れは今後の取引にも影響します。しかし、対策の必要性は理解しているものの、進め方がわからない、多額の初期投資が必要などの理由から、具体策に踏み出せていないケースも少なくありません。
こうした中小企業を後押しするのが、環境省が主導するSHIFT事業です。本コラムでは、SHIFT事業の概要や、補助金活用のために必要な対応について紹介します。
目次
1. SHIFT事業とは?企業の脱炭素推進における役割

2021年にスタートしたSHIFT事業は、「脱炭素技術等による工場・事業場の省CO₂化加速事業(Support for High-efficiency Installations for Facilities with Targets)」の通称で、バリューチェーン全体でのCO₂排出量削減を目指す国の支援事業です。主に中小企業の工場や事業場における脱炭素のロールモデルとなる取り組みを創出し、効果の高い取り組みを横展開することで、脱炭素を加速させることを目的としています。
SHIFT事業には現在、4つの補助事業があります。(※令和7年度の事業概要に基づく)
①省CO₂型システムへの改修支援事業
②DX型CO₂削減対策実行支援事業
③工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業(※継続案件のみ)
④工場・事業場の脱炭素化に向けた課題分析・解決手法に係る調査検討等(※委託事業)
これからSHIFT事業の補助金活用を検討する企業の場合、公募対象となる①と②の概要は、以下の通りです。
省CO₂型システムへの改修支援事業
CO₂排出削減効果の高い設備の導入を支援するもの。空調機やボイラーなどの既存設備を高効率なものへ更新したり、電化、燃料転換、熱回収などによって脱炭素性能を向上させたりして、中長期にわたる省CO₂化を実現することを目的としています。
・補助率:3分の1
・補助上限:1億円または5億円
・支援期間:3ヵ年以内
DX型CO₂削減対策実行支援事業
CO₂削減につながるDXの取り組みを支援するもの。DXシステム導入による設備運用改善、データを活用した効果的な改修計画の策定など、即効性のある省CO₂化のモデル創出を目的としています。
・補助率:4分の3
・補助上限:200万円
・支援期間:2ヵ年以内
SHIFT事業は、中小企業の排出削減に向けた積極的な投資を後押しする制度であり、企業にとっては脱炭素と経営合理性の両立を図るためにぜひ活用したい支援制度なのです。
※上記の支援メニューや期間等は令和7年度の事業内容であり、公募はすでに終了しています。年度によって詳細は異なりますので、最新情報は公式サイトで確認してください。
(参照)
SHIFT事業ウェブサイト(環境省)
2. 補助金活用のポイントと具体的な実務対応

SHIFT事業の補助金活用を検討する場合、まずは要件をチェックしましょう。補助対象となる取り組みや支援メニューは年度によって細かく異なる場合があるので、公募要項をよく確認してください。
令和7年度の公募要領では、①は工場・事業所単位で15%以上、またはシステム系統で30%以上削減する設備、②は年間CO₂排出量が50トン以上3,000トン未満の日本国内にある工場・事業場が対象となっていました。また、1事業者あたり最大5つの工場・事業場を申請可能で、①と②の併願はできない、などの条件が設けられています。
年度によって支援内容に違いはあるものの、補助金活用の第一歩としてまず必要なのは、自社のエネルギー使用状況や設備の現状把握です。また、申請には削減実施計画のほか、使用する算定ツールや支援機関の選定なども必要になります。補助金額には上限があるので、どの工場(事業場)に何を導入し、どの程度のCO₂削減を目指すのかを整理し、削減効果と投資額のバランスを熟慮した上で計画をまとめましょう。
サプライチェーン全体の「CO₂排出量見える化」から低・脱炭素ソリューションによる「CO₂排出量削減」までワンストップでサポートします!
D-Lineup×アスエネ(CO₂見える化・削減)(大阪ガス・Daigasエナジー)
どのような設備更新が考えられるかわからない場合は、まずは過去の対策事例を参照してみるとよいでしょう。
SHIFT事業は、公募開始から申請、交付決定、事業実施〜完了まで、一定の期間と手続きを要します。採択事業者となった場合は、事業を行う間にも中間報告・検査などがあり、期限までに最終成果報告が必要となります。
(参照)
既存設備からの設備更新対策事例(環境省)
令和7年度SHIFT事業①の公募から補助金交付までのスケジュール
上の図は、①の改修支援のスケジュールです。公募開始からおよそ8ヵ月半の間に、各種書類の準備・提出や事業計画の見直しなどを行う必要があるため、綿密な計画立案はもちろんのこと、スケジュール管理も重要なことがわかります。採択された際には、実施計画に基づいて取り組みを着実に進めることに加えて、自主対策によって削減効果・効率をさらに向上させるなどして、より効果的な省CO₂化の実現を目指すことが望まれます。
3. SHIFT事業を活用できる最適なソリューションで脱炭素加速へ
SHIFT事業を効果的に活用するには、制度を理解した上で、自社に適した設備やソリューションを選定することが重要です。SHIFT事業の公式サイトにある「CO₂削減対策Navi」では、お役立ち情報として、代表的なCO₂削減対策メニューリストのほか、過去の導入事例や診断事例、セミナー情報などが公開されています。検討の際に参考にしてみるとよいでしょう。
Daigasエナジーでは、都市ガスへの燃料転換や、コージェネレーション・空調・ボイラといった高効率設備の導入・更新、太陽光発電やバイオマス活用など、低・脱炭素化に向けた幅広いソリューション「D-Lineup」を提供しています。SHIFT事業ではさまざまな業種で多様な取り組みが可能なため、お客さまの課題や設備運用状況に応じて最適なソリューションをお客さまとともに検討します。さらに、エネルギー会社として長年培ってきた知見を生かした、省エネやエネルギー利用最適化の支援実績も多数ございます。
(参照)
CO₂削減対策Navi(環境省)

D-Lineupとは、業務用・工業用のお客さまの低・脱炭素化に向けた、Decarbonization(脱炭素化)、Decentralization(分散化)、Digitalization(デジタル化)の3つのDを軸とした低・脱炭素サービスです。

D-Lineupの詳細はこちら(大阪ガス・Daigasエナジー)
また、補助金活用のための情報収集や書類作成は、企業にとって決して負担の小さいものではありません。Daigasエナジーでは、多岐にわたる設備・業種のお客さまに向けて、補助金の提案から申請までをサポートしています。お気軽にご相談ください。
4. まとめ:SHIFT事業で進める企業の脱炭素化戦略

脱炭素は多くの企業にとって重要テーマである一方、投資判断が難しく、後回しにされがちな課題でもあります。SHIFT事業は、こうした課題を抱える中小企業にとって、現実的な対策の一歩を踏み出すために有効な選択肢のひとつです。
補助金をうまく活用すれば、CO₂排出削減だけでなく、投資回収にかかる期間を短縮でき、脱炭素と企業成長の両立も期待できます。設備更新のタイミングやエネルギーコストの見直しとあわせて、経営戦略としてSHIFT事業の利用を検討してはいかがでしょうか。補助金を活用できる取り組みにご関心がありましたら、ぜひDaigasエナジーにお問い合わせください。
新着記事
関連コンテンツ
タグから探す


SHIFT事業で進める企業の脱炭素〜補助金活用と実務対応〜
COP30の停滞にもかかわらず、長期的に続く脱炭素への道
排水処理とは?仕組みや処理方法・関連法規を解説
改正GX推進法とETS義務化〜企業が“今”取り組むべき実務と戦略〜
ブルーカーボン〜海が秘める気候変動対策〜
気候変動への適応の重要性と企業戦略
デジタル×脱炭素で進める「気候テック」の潮流
