2024.10.28
近年、気候変動対策として温室効果ガス排出削減が進められており、再生可能エネルギーへの関心が高まっています。その一つに太陽光発電がありますが、太陽光パネルの設置場所としてカーポートの屋根(ソーラーカーポート)が注目されています。
本記事では、ソーラーカーポートの種類、導入方法、施工方法、法規制及び注意点について詳しく紹介します。これらの情報から、ソーラーカーポートへの理解を深め、太陽光パネル設置の選択肢の一つとしてご検討ください。
「ソーラーカーポート」とは、カーポートの屋根として太陽光発電パネルを用いるもの(太陽光発電一体型カーポート)、あるいは、カーポートの屋根上に太陽光発電パネルを設置するもの(太陽光発電搭載型カーポート)を指します。ソーラーカーポートを設置することで、駐車している車を雨や雪から守ると共に、再生可能エネルギー発電設備を導入できることが大きなメリットとして挙げられます。
太陽光発電の導入に際して多くの企業が直面する課題の一つが、設置場所の確保です。
例えば、空き地がないため建物の屋根への設置を検討しても、屋根が小さい場合、複雑な形状の場合及び耐荷重が不足している場合などは、設置場所を確保できないことがあります。また、設置場所が確保できたとしても、設置面積が小さい場合は、再生可能エネルギー電力を十分に得られないことがあります。
そのような場合には、ソーラーカーポートという選択肢もあります。ソーラーカーポートであれば、自社の所有する駐車場やカーポートに、太陽光発電システムを導入することが可能です。
ソーラーカーポートは、「太陽光発電一体型カーポート」と「太陽光発電搭載型カーポート」の2種類に大別されます。これらの違いについて説明します。
一体型とは、太陽光パネルとカーポートの屋根が一体となったタイプです。このタイプは、屋根に太陽光パネルを使用しているため、搭載型よりもトータルコストが安くなる傾向があることに加えて、ポート下が搭載型よりも少し明るくなります。
一体型は裏と表の両面で発電できる両面タイプの太陽光パネルが使用されることが多く、太陽光の地面からの照り返しも発電に利用することができるため発電量が多くなります。現在は、この両面タイプの太陽光パネルを使用した一体型のソーラーカーポートが主流となっています。
搭載型はカーポートの上部に太陽光パネルを設置するタイプです。このタイプは、既存のカーポートを活かしつつ太陽光パネルを設置する場合に適しています。ただし、新規に設置する場合は屋根材が高価なため一体型よりも費用が高くなる傾向があります。また、ポート下は一体型よりも暗くなります。
どちらの場合も建築物に該当することから、後述の通り建築基準法等への対応が必要です。
カーポートの基礎工事は大きく分けて杭基礎とコンクリート基礎がありますが、杭基礎はさらにラミング工法と先行削孔根固め工法に分かれています。
杭基礎は杭を直接地面に打ち込み安定させます。コンクリート基礎に比べて施工費が安く、工期が短い傾向にありますが、地盤の強度が弱いと杭基礎は使えません。
地盤が弱い場所や杭基礎が適用できない場所では、コンクリート基礎が使用されます。コンクリート基礎は、地盤全体に大きな面積で荷重を分散させるため、安定した基礎ができます。しかし、コンクリートが完全に硬化するまでの養生期間が必要で、施工には時間がかかる上に、工費も高くなる傾向があります。
カーポートは4本足タイプや2本足タイプなど、支柱の本数による違いがあり、お客さまのニーズによって最適なタイプが異なります。以下で、それぞれのタイプについて解説します。
4本足はカーポートの四隅に支柱を配置して屋根を支えるため、構造が非常に安定しており強度が取りやすいのが特徴です。また、基礎には杭基礎を採用できるため施工費が安く、工期が短い傾向にあります。他にも、補助金の要件を満たしやすい点もメリットです。
一方で、4本足は乗り降りの際に支柱が邪魔になるため、駐車スペースの幅などにより利便性が左右されてしまうという注意点もあります。
2本足(片持ち)は片側の支柱だけで屋根を支えるタイプです。2本足は前方の支柱がないため、支柱が車の乗り降りの邪魔になりません。
しかし、屋根を後方の支柱のみで支えるため、4本足よりも太い支柱が必要になります。また、基礎を大きくすることにより施工費が増加し、工期も長くなる傾向にあります。
1本足はY型とも言い、アルファベットのY字のように、支柱の両側に屋根がついているタイプです。1本足も2本足と同様に支柱が車の乗り降りの邪魔になりませんが、支柱の両側に屋根がある分、高い強度が要求されるため施工費が増加し、工期も長くなる傾向にあります。
2本足や1本足は、商業施設など、不特定多数の人々が利用する場所に適しています。
ソーラーカーポートを導入する際には大別して、①自己所有型、②リース、③PPAの3つの方法があります。それぞれの導入方法について解説します。
自己所有型は、発電設備を自ら購入して設置し、発電した電力を自己消費するか、余剰分を売電する方法です。発電設備の購入費用・設置費用・メンテナンス費用など、導入時から多くの費用が必要です。
リースは、発電設備をリース会社から借りて設置し、発電した電力を自己消費するか、余剰分を売電する方法です。自己所有型より初期投資にかかる費用は少ないものの、毎月の固定費(リース料や保守費など)が発生します。
PPA(Power Purchase Agreement)は、発電事業者と施設・土地の所有者との間に交わされる契約です。自己所有型やリースとは異なり、発電した電気は発電事業者から購入することになりますが、発電設備の購入費用・設置費用・メンテナンス費用は発電事業者が負担します。
下記リンクでは、PPA方式でソーラーカーポートを導入頂いたお客さまの事例を紹介しています。ぜひご覧ください。
ソーラーカーポートの導入には、いくつかの法規制や制約が存在します。これらに注意し、事前に確認すべき内容を紹介します。
既存の施設にソーラーカーポートを導入する場合、工事期間中は駐車場の一部が使用できなくなる可能性があります。そのため、代替駐車場の確保などの対策が必要です。また、土木工事による騒音や振動が発生する可能性があるため、近隣住民への説明が必要になる場合もあります。
着工には、建築確認申請の確認済証が必要で、お客さまの前願が不備なく揃っていることが着工の条件となります。さらに、駐車場の地中に埋設配線や配管がないことも事前に確認し、表明する必要があります。
ソーラーカーポートは不動産登記法上の建物にはあたりませんが、建築基準法上の建築物に該当するため、建築確認申請が必要です。基準風速や積雪荷重、地盤及び基礎の強度等を確認し、条件を満たす仕様が求められます(加えて、電気事業法の規定が適用される工作物(電気工作物)にも該当します)。
例えば、建築基準法の第2条、第1号、建築物には、
「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、これに附属する門若しくは塀、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含むものとする。」
とあり、上記に該当する建築物を建築しようとする場合は原則として建築確認申請が必要となります(ただし、対象地の用途地域や建築物の規模・用途により異なっており、10m²以下且つ防火または準防火地域以外の場合は、建築確認申請は不要となるなど除外規定も多く、事前に専門家への確認が推奨されます)。
建築物の種類は、建築基準法の第6条、第1項により第1号~第4号に分類されますが、1棟が200m²未満である場合は建築基準法上の第4号建築物にあたります。カーポートのほとんどはこの第4号建築物に該当しますが、カーポートの面積を増やすと1号建築物に該当する可能性があり、工期や費用が増大するため、大型のカーポート設置を検討している場合には注意が必要です。そのような事態を防ぐためにも、カーポートの着工には建築確認申請及び構造計算、建ぺい率の確認などが必要になります。
(参照)
『建築基準法』(e-Gov ポータル)
◆注意が必要となる主な項目例
項目 | 注意点 |
---|---|
建ぺい率、容積率 | ソーラーカーポートの面積は、建ぺい率・容積率の計算に算入されるため注意が必要である |
基準風速 | 国交省告示により定められた市区町村ごとの基準値への対応が必要である |
積雪荷重 | 各都道府県が定める積雪量への対応が必要である |
地盤・基礎の強度 | 建築基準法仕様規定において、建築物の規模その他の条件に応じて定められた強度を有する必要がある |
用途地域 | 防火地域、準防火地域、法22条地域に建築物を建てる場合、防火性能に適合したソーラーカーポート、屋根材を使わなければならない |
これまで解説した通り、ソーラーカーポートの導入には専門知識と施工経験が必要です。Daigasエナジーはソーラーカーポートの施工経験を活かし、「イニシャルレスで導入したい」「大規模区画に計画的に導入したい」など、お客さまのご要望に応じて柔軟に対応いたします。ソーラーカーポートの導入を検討される際には、ぜひご相談ください。
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