国内外のエネルギー情報をお届けする ENERGY BUSINESS PRESS

COP30の停滞にもかかわらず、長期的に続く脱炭素への道

2026.03.10 公開

COP30の停滞にもかかわらず、長期的に続く脱炭素への道

1. 米国政府の代表が不参加となったCOP30

2025年11月6日にブラジルのアマゾン川河口のベレンにおいて開催されたCOP30(第30回国連気候変動枠組み条約締約国会議)は、地球温暖化を否定するトランプ政権が参加せずに開催された。世界的な地球温暖化対策の枠組みであるパリ協定から10年の節目であり、世界にとって貴重な炭酸ガス吸収源となっているアマゾン川の熱帯雨林に隣接したベレンの国際会議にもかかわらず、従来のCOPのような参加国の熱気はなかった。それは、世界第2位の炭酸ガス排出国である米国代表の不参加が大きい(図表1)。

(図表1)国別炭酸ガス排出量割合(%)
2024年世界合計354,918億トン 新BP統計

国別炭酸ガス排出量割合(%)2024年

出所:世界エネルギー統計レビュー2025年6月

2. 地球温暖化対策への歴史は古い

実は、炭酸ガスが地球温暖化の元凶とされているが、炭酸ガスによる温室効果により、人類は快適な環境で暮らすことができるという見方もある。温室効果(Green House Effect)とは、波長の短い太陽放射を地表に通過させ、波長の長い熱放射を宇宙空間に逃がさず、地球を暖める、ちょうど温室のような働きを意味する(図表2)。

(図表2)温室効果の仕組み

温室効果の仕組み

出所:東京大学大気海洋研究所ホームページ

温室効果は、水蒸気と炭酸ガスが主な要因とされているが、もし大気がないと、地球に放射される太陽エネルギーと宇宙空間に放散される太陽エネルギーが等しくなり、地球の気温はマイナス18度という計算になる。しかし、実際の地球の気温はプラス15度程度であり、33度分の気温上昇が、炭酸ガス、フロンをはじめとした温室効果ガスの効果となる。この気温プラス15度という意味は重要であり、水が凍らず、液体として存在し、人類をはじめとした多様な生物種の生存を可能とする。こう考えると、温室効果は必ずしも悪いことではない。しかし、炭酸ガスの濃度が一定のレベルを超えると、地球の気温がさらに上昇し、暴風雨、干ばつ、海面上昇による島嶼国の水没等の気候変動(Climate Change)が起こることが予測されている。温室効果を最初に指摘したのは、スウェーデンの科学者スヴァンテ・アレニウスとされ、19世紀後半に大気の炭酸ガスが、ちょうど農業生産の温室のように地球の気温を上昇させるという考え方を提起した。つまり、炭酸ガスの濃度上昇による地球温暖化の考えは、3世紀にまたがる歴史をもっている。その後、1980年代に入って、世界各地で記録的な猛暑が続き、Global Warming(地球温暖化)という概念が一般化した。ちょうど筆者が、石油公団(現在のエネルギー・金属鉱物資源機構)の調査部に出向している時期に、米国のエネルギー専門家は、グローバル・ウォーミングという言葉をさかんに口にするようになった。古く歴史を遡れば、古代のメソポタミア文明の時代から、人類の経済活動からの森林伐採による環境破壊が、文明そのものを自壊させてきた。1972年には、ローマクラブによる、「成長の限界」が発表され、人類の驚異的な経済成長が天然資源の枯渇をもたらすと警告し、翌年の1973年に第1次石油ショックが勃発し、その懸念は現実のものとなった。1992年には、ブラジルのリオデジャネイロにおいて国連環境開発会議が開催され、地球環境保護が、広く国際的な議論となった。しかし、地球温暖化対策への議論が本格化し、COP1が開催されて30年になるものの、脱炭素への道のりは長い時間を要してきた(図表3)。

(図表3)地球温暖化の歴史2026年

概要
1827年 フーリエが、地球の温室効果を研究
1861年 ティンダルが、炭酸ガス、水蒸気等が温室効果ガスであることを発見
1896年 アレニウスが、石炭をはじめとした化石燃料の消費により、気温上昇を提唱
1958年 キーリングが、ハワイにおいて炭酸ガス濃度の観測開始
1972年 ローマ・クラブが、成長の限界を発表
1973年 第1次石油ショック
1979年 第2次石油ショック
1988年 米国議会において猛暑による地球温暖化議論開始
1988年 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)設立
1992年 気候変動枠組み条約(UNFCC)成立
1997年 京都議定書採択
2006年 スターン報告発表
2015年 パリ協定採択
2016年 パリ協定発効
2017年 米国トランプ大統領がパリ協定離脱表明
2019年 脱化石燃料へのESG投資が本格化
2021年 米国バイデン大統領がパリ協定復帰
2024年 米国において、反ESG投資の動きが共和党を中心に始まる
2025年 米国トランプ大統領が再びパリ協定離脱表明

出所:各種新聞報道

1987年のモントリオール議定書において、特に温室効果の強いフロンの削減がまず始まり、1988年のトロント会議で炭酸ガスの排出削減が提唱され、1992年に気候変動枠組み条約(UNFCC)が成立し、1995年のベルリンのCOP1から議論が開始した。COP3の京都議定書、2015年のパリ協定を通じて、モザイクを組み合わせるように、苦心のうえに先進国と途上国を含めた世界全体の炭酸ガスをはじめとした温室効果ガス排出削減への取り組みが本格化した(図表4)。

 (図表4)京都議定書とパリ協定の概要

京都議定書 パリ協定
採択年 1997年 2015年
対象国 先進国のみ 世界197の国と地域
地球全体の目標 2012年までに1990年比5%削減 産業革命前から2度未満、1.5度以内に努力
各国の目標 日本6%、EU8% 作成、報告を義務化、達成は義務付けない
途上国支援 規定なし 先進国の支援義務、途上国の自主的拠出

出所:各種新聞報道

3. 停滞するも従来の脱炭素は変わらないCOP30

2025年11月6日から始まったCOP30は、議論が難航した末に11月22日に閉幕した。COP30は、主な資金支援国である米国不在のもと、欧州諸国も国内回帰の保守政党が台頭し、欧米先進国は途上国への資金支援に後ろ向きな姿勢になった。そのため、①途上国の地球温暖化による被害、具体的には洪水等への資金支援として、2030年までに2025年比3倍の1,200億ドル(約18兆6,000億円)という巨額の資金拠出の確約を、途上国は先進国に求めていたものの、欧州諸国等が確約を嫌い、5年先送りした2035年に資金支援を3倍とする、「努力目標」に見直された。②炭酸ガス排出削減のための、石油をはじめとした化石燃料脱却の工程表の策定もできなかった。ブラジルをはじめとした途上国と欧州諸国等80ヵ国以上が工程表に賛同したものの、石油を主な収入源とする産油国、化石燃料を大量に消費する中国等が、強硬に反対した。新たなルールを策定するために、全会一致を原則とするCOPにおいては、反対論がでると具体的な方向性を決められない欠点が露呈した。脱炭素ビジネスを狙い、電気自動車、太陽光発電パネル、風力発電等の再生可能エネルギーに注力する中国は、現在も石油、石炭に大きく依存している現実がある(図表5)。

(図表5)中国の一次エネルギー消費構成比(%)
2024年3,795.0トン(石油換算)

中国の一次エネルギー消費構成比(%)2024年3,795.0トン(石油換算)

出所:世界エネルギー統計レビュー2025年6月

こうした議論の膠着においても、これまでの脱炭素への議論に大きな変化はなく、脱炭素への道筋に異論はなかった。2024年のCOP29において決められた途上国への資金支援を2035年までに3,000億ドルとし、官民あわせて年間1兆3,000億ドルという合意は生きている。温室効果ガス排出削減のために、各国が2035年までの削減目標を加速するための報告書を2026年に作成することに合意した。しかし、米国をはじめとした各国の消極的な姿勢の間にも、地球の気温は上昇を続けており、EU(欧州連合)のコペルニクス気候変動サービスは、2025年における地球の平均気温は産業革命前と比較して1.47度上昇し、史上3番目に暑い夏だったと発表し、2023年〜2025年という3年間平均の地球の気温は、産業革命前と比較して1.52度上昇しており、パリ協定の目標1.5度を超えているとしている。

4. 脱炭素の目標を変えていない日本

世界全体が、脱炭素への道のりに消極的になっているものの、日本の脱炭素政策の目標に変化はない。GX(グリーン・トランスフォーメーション)の促進を行い、高市首相も、地域の理解や環境への配慮を前提に、脱炭素電源を最大限活用すると、2025年10月に所信表明演説を行っている。日本は、2050年度のカーボンニュートラル実現に向けて、2025年2月に、2035年度に2013年度比60%の温室効果ガス排出削減、2040年度に2013年度比73%の温室効果ガス排出削減という意欲的な目標を掲げている(図表6)。さらに、日本は、COP30の首脳級会合において、ブラジル、イタリアとともに、水素、バイオ燃料等の持続可能な燃料の使用を2035年までに4倍以上に増加させることを目指す宣言を表明している。また、日本主導によるアジアの脱炭素を目指す、AZEC(アジア・ゼロエミッション共同体)の取り組みを行っている。COP30の議長国ブラジルと日本は、2025年3月に脱炭素分野における協力の覚書を締結しており、ブラジルはサトウキビを原料としたバイオエタノールの大生産国として知られている。国連は、2035年までに温室効果ガス排出削減目標を2025年2月までに提出することを求めていたが、COP30開催時点においても、200の国・地域のうち114ヵ国にとどまり、2035年の平均削減率も2019年比12%にとどまっており、とりわけ日本は脱炭素への積極的な姿勢に変わりはない。

(図表6)日本の温室効果ガス排出削減目標2025年
2013年度比(%)

国別炭酸ガス排出量割合(%)2024年

 出所:環境省資料

5. トランプ政権の離脱にもかかわらず世界は脱炭素への道を進む

確かに、これまで地球温暖化対策のリーダーであった米国政権の代表が不在であったとしても、米国全体が脱炭素に後ろ向きであるとはいえない。米国は、連邦政府とは別に州の独立性が強く、地球環境保護、多様性の尊重を重視する民主党系の州知事は、COP30に参加している。次期大統領候補とされるカリフォルニア州のニューサム知事は、会場においてトランプ大統領の地球温暖化否定の姿勢を批判している。カリフォルニア州は、脱炭素の実現に熱心であり、2035年までにガソリン車の販売を禁止し、2045年までに発電をすべて脱炭素電源とする。米国の多くの企業も、脱炭素に後ろ向きでは、再生可能エネルギー、電気自動車、アンモニア、水素の技術開発に遅れをとると危機感を示している。トランプ政権、ドイツの産業界等、一部の国、産業界は、ガソリン車回帰に動いているものの、世界的な流れとしては、脱ガソリン車の流れに傾いている(図表7)。

(図表7)主要国のガソリン車見直し2026年

国名 概要
フランス 2040年までにガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する方針
英国 2030年までにガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する方針→2035年に先送り
米国 バイデン大統領は2030年までに新車販売の50%以上をEVに
米国 2024年にEVの普及目標を2032年に最低35%に引き下げ
米国 2024年5月に中国製電気自動車に100%の関税
米国 トランプ大統領は排気ガス規制の緩和
米国 2025年9月末に電気自動車の税額控除廃止
ドイツ 2030年にガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する方針
ドイツ 2025年10月にエンジン車禁止にメルツ首相反対表明
カナダ 2040年までにガソリン車とディーゼル車の販売を禁止、すべてZEVに
オランダ 2025年以降はガソリン車とディーゼル車の新規販売を禁止する法案
ノルウェー 2025年にガソリン車とディーゼル車の新規販売を禁止
スウェーデン 2030年にガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する方針
EU 2035年にガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する合意
EU ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車も2035年に販売禁止
EU 2023年3月→合成燃料限定の内燃機関を2035年以降も容認
EU 2024年7月に中国製電気自動車に追加関税
中国 2019年からNEV規制→HV車の規制緩和
中国 2035年までに新車販売をハイブリッド車(50%)とNEV(50%)にする方針を2020年に表明
中国 2024年1月に2027年までにNEVを45%に引き上げ
インド 2030年までにガソリン車とディーゼル車の販売禁止→その後見直し
米国ニューヨーク州 2035年までにガソリン車販売禁止
米国カリフォルニア州 2035年までにガソリン車とディーゼル車の販売を禁止、すべてZEVに
米国カリフォルニア州 2035年にハイブリッド車の販売禁止
米国カリフォルニア州 2045年までに商用車についても、ZEVに
米国カリフォルニア州 トランプ大統領はカリフォルニア州の販売禁止の撤回決議案に署名
東京都 2030年までにガソリン車の販売禁止
日本 2035年までに、電動化する→ハイブリッド車の販売は認める
日本 トヨタ自動車はハイブリッド車をはじめとして2025年10月の世界生産過去最高
日本 2040年までに小型商用車を電動化

出所:各種新聞報道

中南米のコロンビアは、石炭をはじめとした化石燃料脱却の工程表の見送りに強硬に反対し、2026年4月にオランダとともに、「公正な脱化石燃料への第1回国際会議」を行うことを表明している。化石燃料脱却の工程表については、COP30においても、80ヵ国以上が支持している現実がある。単位熱量当たりの炭酸ガスの排出量が、天然ガスの2倍に達する石炭についても、これまでのCOPの議論において、脱石炭火力発電への動きが加速しており、フィリピンは石炭火力発電の閉鎖を前倒ししている。COP30において、石炭火力発電への依存度が高い韓国も、PPCA(脱石炭連盟)に参加することを表明しており、世界各国は、徐々にではあるもの、脱炭素の実現へと前進している。

6. 日本が世界の脱炭素への実現に果たす役割

世界最大の経済大国である米国のトランプ政権が、パリ協定を離脱したことから、COP30が空中分解することを懸念する声もあったものの、COP30は脱炭素への長期的な道筋の合意を得ることができた。地球温暖化対策に反対する米国も、トランプ大統領の意見だけが国民全体の意見ではない。2028年の大統領選挙において、民主党候補が勝利した場合には、再びパリ協定に復帰することは間違いない。現状においては、①米国は、トランプ政権をはじめとした、脱炭素が経済成長を阻害するというグループが政権を掌握し、②欧州諸国は、海外への資金支援に消極的な保守政党が台頭し、③中国、インドは、米国と並ぶ炭酸ガス排出国であるにもかかわらず、自分たちは途上国であるとして、先進国の資金支援、技術支援を求める、という構図にあり、世界が一つとなって脱炭素に協力する機運が乏しくなっている。しかし、地球の気温は上昇を続け、記録的な猛暑が毎年続き、巨大台風の発生、干ばつ等の気候変動により、脱炭素の実現は待ったなしの状況にある。パリ協定による、「産業革命前から1.5度以内」には2035年までに60%の温室効果ガス排出削減が必要であり、各国の目標はまだまだ不足している(図表8)。

 (図表8)主要国の温室効果ガス排出削減中期目標 2026年1月時点

国名 温暖化ガス排出削減目標(%) 基準年
日本 2040年度までに73%削減 2013年度
米国 2035年までに61%〜66%にバイデン政権積み上げ 2005年
米国 トランプ政権はパリ協定離脱
英国 2030年までに68%削減 1990年
ドイツ 2030年までに65%削減 1990年
EU 2035年までに66.25%〜72.5%削減 1990年
ノルウェー 2030年までに40%削減 1990年
カナダ 30% 2005年
豪州 2030年までに26%〜28%削減 2005年
中国 2035年にピーク時から7%〜10%削減 2005年
ロシア 2030年に25%〜30%削減 1990年
インドネシア 対策を施さない場合よりも26% 2010年
インド 再生可能エネルギーの比率を50% 2005年
ブラジル 2035年に59%〜67%削減 2005年

出所:各種新聞報道

これまで述べてきたように、トランプ政権、欧州の保守勢力等、一部の脱炭素反対への動きがあるものの、米国の環境保護派、欧州諸国の大部分、中国、インド、ロシア、ブラジル等の新興国において、地球環境保護のために脱炭素を実現することへの大きな反対論はない。既に、日本、欧州諸国においては、炭酸ガスの排出量は減少を続けている。短期的なコスト増に惑わされて、世界の潮流となっている脱炭素政策を放棄することは得策ではない。日本は、欧米先進国とアジアとの架け橋となって、AZEC(アジア・ゼロエミッション共同体)のリーダーとして、アンモニア、水素の最先端技術、メタネーション(炭酸ガスと水素を反応させて天然ガスの主成分メタンを生成する技術)、再生可能エネルギーの素材開発技術を役立て、世界の地球温暖化対策に貢献し、日本の新たな経済成長の原動力、雇用の創出をはかる戦略を考慮して、脱炭素に取り組む必要がある。

PAGE TOP