エネルギーサービスにより初期投資ゼロで排水処理設備を導入
バイオガスで発電、さらにボイラで蒸気に有効利用し、CO2削減・エネルギーコスト低減・廃棄物削減を実現

日世株式会社さまは、1951年に日本で初めてソフトクリームを発売し、日本にソフトクリーム文化を定着させたパイオニア企業です。現在ではソフトクリームミックス、コーン、フリーザーを含めたすべての関連商品・サービスをトータルに提供できるソフトクリーム総合メーカーとして業界をリードされています。
各種フルーツの調整品を製造されている南アルプス工場さまでは、生産能力の増強のために第二工場全体の更新および増設工事を実施されました。その際、Daigasグループの水処理ソリューションサービスで高効率な嫌気性排水処理設備(UASB※)とバイオガスコージェネレーション、バイオガスボイラを提案し、エネルギーサービスで導入いただきました。
今回は、導入前の課題や検討の経緯、導入後の効果などについて、FP生産部 副部長 南アルプス工場 工場長 金子 真也さまとFP生産部 生産グループ 技術保全課 木島 剛さまにお話を伺いました。
※UASB:Upflow Anaeroibc Sludge Blanket(上向流式嫌気性汚泥床)の略
導入メリット
- エネルギーサービスにより初期投資ゼロで排水処理設備一式を導入
- 嫌気性排水処理設備(UASB)の採用により、省スペース化を実現
- 汚泥の発生量がゼロになり、産業廃棄物の処理コストが大幅削減
- 副次的に発生するバイオガスで発電、ボイラで蒸気を作ることでCO2とエネルギーコストを削減
- シンプルな排水処理設備であるため、管理にかかる手間を省力化
- 従来お客さまが抱えられていた課題(排水にフルーツの種が混入する等)を考慮した設計を行い、設備トラブルが発生するリスクを低減
導入前の課題
生産量増加に伴い排水処理設備の更新が不可欠な中、建設費用の高騰で予算管理が課題に
導入前の課題について教えてください。
第一工場と第二工場で構成されている南アルプス工場では、生産量を増やす計画を進めていました。生産量が増加すると既設の排水処理設備では処理能力が不足するため、能力増強が必要となります。また、設備自体の老朽化が進んでいることもあり、確実な排水処理を安心して続けるためにも排水処理設備全体の更新が不可欠でした。
結果として、第二工場全体の更新、および増設工事を行うことになりました。かなり大きな投資が必要であり、建設費用が高騰する中、全体の予算管理が大きな課題でした。

また、南アルプス工場では各種フルーツの調整品を製造しています。排水中に果肉や種などの固形物が大量に混ざるため、難易度の高い処理が求められ、定期的な薬剤の投入や見回りなど従業員の作業負担が少なくありませんでした。スリット式の固液分離装置ではイチゴの種などがすり抜け、効率的な排水処理を妨げてしまうトラブルもしばしば発生していました。汚泥も多く発生しており、産業廃棄物の処理コストがかかっていました。
導入時の検討内容
初期投資ゼロで導入できるエネルギーサービスを検討
バイオガスを有効活用したシステム設計により環境性にも配慮
導入時の検討内容について教えてください。
予算管理に苦労していた中、エネルギーサービスにより初期投資ゼロで設備導入ができる点は魅力的でした。排水処理設備を初期投資ゼロで導入できれば、生産設備へ投資を集中させることができるため、エネルギーサービスの採用を前向きに検討しました。
また、会社としてカーボンニュートラルプロジェクトに取り組んでいますので、排水処理設備も環境負荷低減につながるシステムにしたいと考えていました。それに対し、「排水処理設備から発生するバイオガスで発電し、さらにボイラで発生させた蒸気を有効活用する」ご提案をいただき、バイオガスを使って発電するバイオガスコージェネレーション(25kW×1台)とバイオガスボイラを導入しました。新工場が立ち上がり排水処理設備がフル稼働した際には、発生するバイオガスも増えるため、バイオガスコージェネレーションの増設をもう一台検討しています。

導入後の効果
汚泥発生がゼロになり、産廃処理費用が大幅削減
設備管理の負担軽減やバイオガスの有効活用によるCO2削減も大きな成果
導入による成果を教えてください。
新しく導入した嫌気性排水処理設備(UASB)は処理能力が高く、河川放流できるレベルにまで処理できています。今までは汚泥も発生しており、週に一度は産廃業者に引き取ってもらっていましたが、更新後は汚泥の発生がゼロになりました。産廃処分費が不要になるため、大幅なコスト削減が期待できます。
また、設備管理にかかる手間も大幅に削減できました。更新前は、毎日複数の薬剤を混ぜ合わせて投入していました。薬剤を配合するのに知識やスキルも必要でしたし、その作業に毎日一時間近く時間が取られていました。更新後は1つの薬品を投入するだけなので手間がかからず、誰でも対応できるほど簡単になりました。
排水処理過程で発生したバイオガスは、バイオガスコージェネレーションとバイオガスボイラの燃料として活用しています。バイオガスコージェネレーションで発電した電力は排水処理設備の電力に使用し、バイオガスボイラで発生させた蒸気は嫌気処理の加温に使用しています。エネルギーを無駄なく使えるようになり、CO2削減や環境負荷低減に貢献できると考えています。



導入の決め手
排水の特質や省スペース化に対応した提案と、初期投資ゼロかつ生産量に応じた支払が可能なエネルギーサービスが導入の決め手

ご依頼いただいた理由や導入の決め手を教えてください。
前述の通り、当社の排水は特殊で難易度の高い処理が必要ですが、それに対応した提案をして頂いたことが大きかったと思います。更新前のスリット式固液分離装置ではフルーツの種がすり抜け効率的な排水処理を妨げてしまうという悩みに対しては、固液分離を高効率で行う振動スクリーンをご提案いただきました。水と種がしっかりと分離されるようになり、種に起因するトラブルも軽減されることを期待しています。
また、第二工場全体の更新・増設工事が具体的に進んでいく中で、排水処理設備の設置場所が変更になったり、設置スペースが当初の半分以下になったりと、計画の変更を余儀なくされましたが、そのような変更にも対応し省スペースで設置できる設備をご提案いただきました。
投資の面では、排水処理設備を初期投資ゼロで導入できたことで、生産設備への投資に集中できたのは大きなポイントでした。また、エネルギーサービスの変動料金制も非常に魅力的で、他拠点のびわ湖工場でも、コージェネレーションや太陽光発電での契約実績があり、コロナ禍の影響で生産量が下がった際に料金の支払いを抑えられました。これらの実績も、採用理由の一つになっています。
今後の展望
カーボンニュートラルプロジェクトの推進に向けて
脱炭素化や環境性向上につながる幅広い提案に期待
今後の展望について教えてください。
第二期の建設工事も控えていますので、引き続き、迅速かつ柔軟なご対応をお願いしたいと考えています。
また、当社ではカーボンニュートラルプロジェクトを全社で進めており、工場として環境性を向上させるミッションがあります。全国にある各工場で連携して活動を進めており、お互いに情報交換や見学会も行っています。今後もこれらの取り組みを推進していきたいと考えていますので、ぜひお力添えいただきたいと思います。排水処理に限らず、脱炭素化や環境性向上につながる幅広いご提案を期待しています。

担当者からひと言

Daigasエナジーでは、お客さまの課題やニーズをお伺いした上で、様々なメーカーや排水処理方式の中から最適なソリューションを選定させていただきます。今回は省スペース化や種の除去などのニーズに対応したご提案ができたことを評価いただけたと感じています。
日世株式会社さまではカーボンニュートラルプロジェクトを推進されており、高い環境意識をお持ちです。弊社としてもお客さまのカーボンニュートラル化支援は大きな使命ですので、「私自身もそのプロジェクトを担う一員である」という意識で、目標達成に向けて二人三脚で取り組ませていただきたいと考えています。そのためには、お客さまが認識されている課題のみならず、潜在的なニーズも汲み取ってお役に立てるご提案ができるよう、今後も取り組んでまいります。
広域営業部 水田 晃一朗
お客さまのご紹介
日世株式会社さま
1947年に貿易商としてスタートした日世株式会社。1951年からソフトクリーム事業に携わり、日本にソフトクリーム文化を定着させたパイオニア企業である。“付加価値を創造し続けながら「食の安心と楽しさ」を提供していく”を企業理念に掲げ、ソフトクリーム総合メーカーとして現在も業界をリードしている。南アルプス工場は1983年に操業を開始して以来、厳選された果肉・果汁を加工したフルーツ調整品「フルーツプレパレーション」を一貫して生産。ヨーグルト、アイスクリーム、デザート類、菓子、飲料など食品業界のあらゆる分野へ供給している。
- 所在地
- 山梨県南アルプス市大師811番地1
- お客さまホームページ
- https://www.nissei-com.co.jp/


※掲載の情報は取材当時(2025年4月)のものです。
関連事例
-
- 工場
- 再エネ電気
- 太陽光発電
- 水処理
- エネルギーサービス
日本ピュアフード株式会社 西宮プラントさま
D-Aqua(オイルバクターシステム)で汚泥発生を抑制し、廃棄物を大幅削減 太陽光発電や再エネ電気の導入により、電力のCO2排出量ゼロを達成
-
- 商業施設
- 水処理
- コージェネレーション
- 空調
- エネルギーサービス
神戸須磨シーワールドさま
阪神淡路大震災の教訓を活かし、人と生きものを守るBCP機能を構築 エネルギーサービスと補助金活用でコスト削減を実現
-
- 工場
- 太陽光発電
- 水処理
- コージェネレーション
- エネルギーサービス
株式会社マルヤナギ小倉屋 大門工場さま
省スペース設置した嫌気性排水処理システム「ICリアクター」の導入で産業廃棄物の大幅削減と省力化を達成
下記フォームよりお気軽にお問い合わせください。