阪神淡路大震災の教訓を活かし、人と生き物を守るBCP機能を構築
エネルギーサービスと補助金活用でコスト削減を実現
神戸須磨シーワールドさまは、神戸市の公募事業である「須磨海浜水族園・海浜公園再整備事業」の中核を担う施設として、2024年6月にオープンした水族館です。株式会社サンケイビルさまを代表企業とする7社で構成された「神戸須磨 Parks + Resorts 共同事業体」が2019年からプロジェクトを進められ、その中で停電対応コージェネレーションとジェネリンク(廃熱投入型ナチュラルチラー)、温水ヒーター、井水処理設備をエネルギーサービスで導入いただきました。今回は、導入の経緯や検討内容などについて、株式会社サンケイビル 技術本部 環境技術部 課長の薬袋英之さまにお話を伺いました。
導入によるメリット
- 中圧ガス供給の停電対応コージェネレーションにより、来館客と生き物を守るBCPを構築
- エネルギーサービスと補助金の活用でイニシャルおよびランニングコストを低減
- コージェネレーション廃熱の空調への利用や電力ピークカットなどにより、省エネ・省コストを実現
- 井水処理設備により、水道代の削減と水のBCPを実現
導入前の課題
人と生き物を守るための強靱なBCP構築とコスト低減が大きな課題
導入をご検討いただいた背景について教えてください。
阪神淡路大震災の教訓を活かし、当初から「災害に強い建物の構築」をテーマの一つに掲げていました。水族館という性質上、来館されたお客さまはもちろんのこと、展示されている生き物も守れるように、災害時にBCPを実現できる設備導入を検討していきました。
また、環境負荷やランニングコストの低減に向けて、省エネ性の高い設備を選定するという観点も不可欠でした。
一方、社会情勢などの影響による建設コスト上昇が大きな課題となりました。事業を成立させるためにはイニシャルコスト低減が必要であり、そのための方策も模索していました。
導入時の検討内容
エネルギーサービス契約と3つの補助金の活用で、イニシャルおよびランニングコストを低減
導入時の検討内容について教えてください。
イニシャルコストの低減という命題を解決するために、初期投資を抑制して設備関連コストの平準化ができるエネルギーサービス契約の活用を検討しました。加えて、補助金を活用することでエネルギーサービスの原資となる設備コストを抑え、ランニングコストの削減も目指しました。Daigasエナジーさんや関係各社さんにお力添えいただきながら、「補助金採択の可能性を高める」という視点からも設備選定を行い、実際に下記の3つの補助金を採択することができました。
・「災害時の強靱性向上に資する天然ガス利用設備導入支援事業費補助金」(対象設備:停電対応コージェネレーション)
・「省エネ街区形成事業」(対象設備:ジェネリンク(廃熱投入型ナチュラルチラー)・温水ヒーター等)
・「サステナブル建築物等先導事業」(対象設備:井水処理設備等)
導入後の成果
廃熱利用や熱融通などエネルギー最適化による省エネ・省コストや、電気・水のBCPを実現
導入による成果を教えてください。
Daigasエナジーさんからご提案頂いた設備としては、停電対応コージェネレーション計800kWとジェネリンク(廃熱投入型ナチュラルチラー)計400冷凍トン、温水ヒーター、井水処理設備を導入しました。
成果の1つ目は、前述の通りイニシャルコストの低減です。エネルギーサービス契約によりイニシャルコストを低減できたのは大きな成果だと思います。
2つ目はランニングコストの低減です。補助金の活用によって月々のエネルギーサービス料金が下がり、ランニングコストも低減することができました。また、コージェネレーション廃熱の空調(ジェネリンク)への利用や、「オルカスタディアム」「ドルフィンスタディアム」「アクアライブ」の3棟を配管で接続して熱を融通し合うことにより、エネルギーの無駄をなくして省エネ・省コストを実現できています。加えて、コージェネレーションにより夏場の電力のピークカットができ、電気代の削減につながっています。
さらに、井水処理設備によって処理した井水を、ドルフィンスタディアムの椅子の冷却や飼育用の水などに利用していますが、上水の代わりに井水を使うことで水道代を削減することができています。
3つ目はBCPの構築です。停電対応コージェネレーションにより、災害時にも建物への給電を確保できるようになっています。特に、給水ポンプや熱源の制御システムなど、水槽の温度管理に関わる負荷などを重要負荷に選定し、水族館としてクリティカルな部分を守れるようにしています。また、井水利用により断水した際も水を確保して雑用水として活用できるため、水のBCPにもつながっています。
導入の決め手
大震災の際もほとんど被害のなかった中圧ガス供給のコージェネレーションを評価
幅広い設備を取り込んだエネルギーサービス提案も魅力
導入の決め手を教えてください。
冒頭でも述べたとおり、阪神淡路大震災を経験した神戸として、BCPの観点は譲れないポイントでした。停電対応コージェネレーションにつながっている中圧のガス管は、阪神淡路大震災の際にも被害がほとんどなかったという実績があり、安心感がありました。また、我々のコスト削減の課題に対し、幅広い設備をエネルギーサービスに取り込んで提案頂いた点も魅力的でした。Daigasエナジーさんとは以前にも別プロジェクトでエネルギーサービス契約を締結した実績があり、検討を進めやすかったという側面もあります。
エネルギーサービス契約にはメンテナンス対応も含まれているため、設備の維持管理をアウトソーシングできて省人化を図れる、という点も評価しました。維持管理の手間がなくなることで、現場の担当者の業務に余裕ができて、他のことに目を向けられるというのはメリットだと感じています。
Daigasエナジーへの要望
より広範囲でフレキシブルなエネルギーサービス提案を期待
Daigasエナジーに期待することを教えてください。
本事業は関係者も多く、補助金やエネルギーサービス契約も活用したため、検討や調整に多くの時間と労力がかかりました。そんな中、Daigasエナジーさんには我々からの問合せや依頼事項に対し、遅滞なくスピード感をもって対応いただけたので助かりました。
今回、複数の設備をエネルギーサービスで導入しましたが、プロジェクトによってはイニシャルコストを極限まで切り詰めないといけないケースもあり、今後さらにエネルギーサービス契約で対応できる設備の幅を広げてフレキシブルな提案をいただけると有難いです。
担当者からひと言
神戸須磨シーワールドさまを中核とした「須磨海浜水族園・海浜公園再整備事業」は約5年に渡る長期プロジェクトで、弊社も当初からエネルギー設備を中心にご提案をさせて頂きました。私は竣工後に担当を引き継がせて頂きましたが、まずは設計通り運営が軌道に乗るように、アフターフォローを真摯に対応していきたいと考えています。また補助金を使用しているため、実績報告などの対応についても精一杯サポートさせて頂きます。
また、本件に限らず、サンケイビルさまや他の関係各社さまが手掛けられる他の施設についても、低・脱炭素やコスト削減に資するメリットのあるご提案ができるよう取り組んでいきたいと思います。
都市圏営業部 矢野 雅弥
お客さまのご紹介
神戸須磨シーワールドさま
神戸須磨シーワールドは、2024年6月にオープンした水族館。「オルカスタディアム」「ドルフィンスタディアム」「アクアライブ」の3エリアで構成され、東側には「神戸須磨シーワールドホテル」が併設されている。「学び(エデュケーション)」と「遊び(エンターテインメント)」を融合した「『つながる』エデュテインメント水族館」をコンセプトに、西日本唯一となるオルカ(シャチ)のパフォーマンスや、リアルとバーチャルを融合させた新しい展示手法をはじめとして、大人も子どももワクワクできる水族館を目指している。
- 所在地
- 兵庫県神戸市須磨区若宮町1丁目3-5
- お客さまホームページ
- https://www.kobesuma-seaworld.jp
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