株式会社マルヤナギ小倉屋 大門工場さま

省スペース設置した嫌気性排水処理システム「ICリアクター」の導入で産業廃棄物の大幅削減と省力化を達成

株式会社マルヤナギ小倉屋 大門工場さま

株式会社マルヤナギ小倉屋さまは、素材・おいしさ・健康をテーマに、伝統食材を活かした新しい食の提案に取り組む食育型カンパニーです。豆や昆布、もち麦などの健康価値の高い食材を用いて、佃煮や煮豆、蒸し豆、惣菜をはじめとした食品の製造販売を行っています。また、環境対策は21世紀企業の責務ととらえ、商品開発から生産・流通などのすべての段階において環境負荷の低減に取り組んでいます。その取組実績は官公庁から高い評価を受け、経済産業省近畿経済産業局主管の「カーボンニュートラル実現、SDGs 経営を志向する水処理のベスト・プラクティス集」や兵庫県主管の「ひょうごバイオマスeco モデル」に登録され、経済産業省の「地域未来牽引企業」にも選定されています。
マルヤナギ小倉屋さまの主要工場の一つである大門工場において、2020年に嫌気性排水処理システム「ICリアクター」とバイオガスコージェネレーションを導入いただきました。さらに2021年には停電対応コージェネレーション、2024年には太陽光発電サービス「D-Solar」も導入いただいています。今回は、導入の背景やその成果などについて、執行役員 生産本部 部長 横野 真章さまと生産本部 次長 蓬莱 広志さまにお話を伺いました。

導入によるメリット

  • 排水処理設備の増強により汚泥発生量が60%減少し、処分費が大幅削減
  • 処理水の水質が安定し、管理の手間を大幅に削減
  • 排水から発生するバイオガスの有効利用により環境負荷を低減
  • 停電対応コージェネレーションにより停電時も製造に必要な給電を確保
  • 太陽光発電サービスD-Solarにより電気代とCO2排出量の削減を実現

導入前の課題

生産量倍増に伴い既設設備での排水処理が追いつかず水質が不安定に
電気代や汚泥処分費、管理の手間も増大

執行役員 生産本部 部長 横野 真章さま
執行役員 生産本部 部長 横野 真章さま

排水処理設備とバイオガスコージェネレーションの導入をご検討いただいた背景について教えてください。

大門工場では主に佃煮を製造しています。佃煮製造で使用した水は高負荷排水であり、下水放流するには適切な処理が必要です。従来は250トン/日の処理能力を有する好気性排水処理システムで対応してきました。しかし、2001年の工場竣工時の設計に対して、近年では生産量が倍増したのです。そのため排水処理が追いつかず、沈殿槽では汚泥が浮上し、処理水の水質が不安定になっていました。また、曝気ブロワの電気代も増大しました。

さらに、処理しきれない汚泥は人力で抜いて3トントラックに乗せ、約1.4km離れた別工場へと1日3〜4回運んで処理しており、多大な手間がかかっていました。当然ながら汚泥処分費も増加しました。担当者が月に10日は排水処理につきっきりで対応していましたが、最悪の場合は生産を停止しなければなりませんでした。このような状況だったため、排水処理能力の増強は喫緊の課題でした。

生産本部 次長 蓬莱 広志さま
生産本部 次長 蓬莱 広志さま

導入前の検討内容

既存の好気性排水処理システムの増床を検討するも、設置スペースがネックに

排水処理システムとバイオガスコージェネレーション導入に至るまでの流れを教えてください。

当初は従来から使用していた好気性排水処理システムの増床を検討しました。しかし、設置スペースが限られていることやランニングコストがかさんでしまうことから別の方法も模索していました。その中で浮上したのが嫌気性排水処理システム「ICリアクター」でした。ICリアクターはタワー型で省スペース化が図られており、好気性処理の曝気槽と比べて約1/10ほどの敷地面積に設置できます。また、処理能力が高く、ランニングコストや作業負担を軽減できることもわかりました。
検討を重ねた結果、既設の排水処理システムの前処理としてICリアクターを導入することを決めました。また、排水処理過程で発生するバイオガスを有効利用するため、バイオガスコージェネレーションも合わせて採用しました。
設備導入にあたっては初期投資の負担も課題でした。自己資金での購入やリース、補助金の活用、エネルギーサービスなど、様々な選択肢を検討しました。

導入後の成果

汚泥発生量が60%減少し、処分費が大幅に削減
排水管理の省力化やバイオガス利用による環境負荷低減も実現

排水処理システムとバイオガスコージェネレーション導入による成果を教えてください。

350トン/日の排水処理能力を有するICリアクターの導入により、工場全体の排水処理能力が600トン/日となり大幅な増強が叶いました。既存の排水処理設備の負荷が20〜30分の1程度に低減し、負荷変動にも対応できるようになり水質も安定しています。管理の手間も大幅に削減でき、担当者の業務負担や精神的負担も大きく軽減しました。
余剰の処理能力が生まれたことで、これまで産業廃棄物として処分していた濃厚調味廃液を、他工場の分も含めて排水と混合して自社で処理できるようになりました。1日30トン発生していた汚泥は12トンまで減少し、処分費が大幅に削減できました。
また、ICリアクターで排水中有機物負荷を低減させた後に既存の好気性排水処理設備で処理を行うことで、曝気ブロワの電力消費量が半分以下となり、電気代は約56%も削減することができました。
さらに、排水処理過程で発生したバイオガスを、バイオガスコージェネレーションにより電気と熱エネルギーに変換し、電気についてはFIT制度を活用して約1,000kWh/日を売電しています。排水からエネルギーを回収して有効活用することで、コストメリットを確保しつつ環境負荷の低減に貢献することができています。

ICリアクター(左)とバイオガスホルダー(右)
ICリアクター(左)とバイオガスホルダー(右)
バイオガスコージェネレーション
バイオガスコージェネレーション

導入の決め手

エネルギーサービスで初期投資の負担を抑えられたことが決め手

導入の決め手を教えてください。

ICリアクターは省スペースで設置できるうえにランニングコストも抑えられます。導入のメリットが大きいことはわかっていましたが、前述の通り、初期投資の負担がネックでした。そんな中、Daigasエナジーさんから提案頂いたのが、初期投資ゼロで設備を導入できるエネルギーサービスでした。エネルギーサービスにより、初期投資負担の課題を解決できたことが導入の決め手となりました。
導入が決定した後、できるだけ早く設備導入を進めたいと考えていましたが、手続きや工事もスピード感をもって対応していただいたと感じています。

今導入の決め手についてお話しいただく横野さまと蓬莱さま

停電対応コージェネレーション・D-Solarの導入と今後の展望

中圧ガス供給のコージェネレーションで停電時も給電を確保
太陽光発電も導入しさらなる環境負荷低減の取り組みを推進

停電対応コージェネレーションと太陽光発電サービス「D-Solar」を導入した背景や成果について教えてください。

大門工場がある地域は落雷が多く、数年に一度は落雷による停電が発生します。停電になると製造機器や冷蔵冷凍庫などがすべて止まるため、製造途中の食材や保管してある原料を廃棄しなければなりませんでした。そこでBCP対策のため2021年に停電対応コージェネレーション400kWを導入しました。強靭性の強い中圧ガス供給のため災害時にも長時間の給電が確保でき、食材の廃棄を防げる体制が整いました。また、加東市と「緊急避難場所及び避難所の指定に関する協定」を締結し、地域のレジリエンス向上にも貢献できています。
2024年にはさらなる環境負荷の低減を目指して、太陽光発電サービス「D-Solar」239kWを導入しました。長期間固定価格で電力を購入でき価格高騰リスクを回避できる点にメリットを感じ、PPA方式を採用しました。電気代を削減できたのはもちろん、屋根に設置した太陽光パネルの遮熱効果で夏場の工場内の温度の上昇が抑えられ、空調コストも削減できました。

停電対応コージェネレーション
停電対応コージェネレーション
太陽光発電サービスD-Solar
太陽光発電サービスD-Solar

今後の展望について教えてください。

大門工場ではさまざまな取り組みを行ってきました。ICリアクターと停電対応コージェネレーション、D-Solar導入によって、222kL/年※の省エネ、約345トン/年※のCO2排出量削減を見込んでいます。今後については、エネルギーの見える化や廃棄物の減容化などを検討しており、さらなる省エネや環境負荷低減の取り組みを進めていきたいと考えています。

※太陽光発電は稼働1年未満のため発電シミュレーション値を含みます。

MOVIE

今回導入頂いた排水処理システムのメーカーである株式会社IHIプラントさまにて、本事例をアニメで分かりやすくご紹介いただいております。お客さまへのインタビューも交えておりますので、是非ご覧ください!!

※下記の画像をクリックすると、株式会社IHIさまのYouTube動画へリンクします。

イニシャルレスでIHI

担当者からひと言

法人第1営業部  岡 則人

マルヤナギ小倉屋さまでは、廃棄物の削減やエネルギーの有効利用、CO2削減など、さまざまな環境負荷低減への取り組みを進められています。そのための設備として、排水処理設備やコージェネレーション、太陽光発電をご採用頂きましたが、いずれも初期投資なしのスキームでご提案できたことにメリットを感じていただけたのではと感じています。エネルギーサービスはメンテナンスや維持管理も含んだ契約となっており、今後も設備が問題なく稼働しお客さまが事業に専念いただけるよう、精一杯サポートさせて頂きます。また他工場さまへの展開も含め、お客さまのさらなる取り組みの推進に役立つご提案ができるよう検討していきたいと思います。

法人第1営業部  岡 則人

お客さまのご紹介

株式会社マルヤナギ小倉屋 大門工場さま

株式会社マルヤナギ小倉屋 大門工場さま

1951年に創業した株式会社マルヤナギ小倉屋は、佃煮・煮豆・蒸し豆・惣菜などを製造販売する食品メーカー。「伝統食材のすばらしさを、次の世代へ」をメインテーマに掲げ、伝統の技を継承しながら、未来志向の創造的な食の提案に果敢に取り組んでいる。業界初のレトルト煮豆やシェアNo.1を誇る蒸し大豆や袋佃煮など、数々のヒット商品を生み出し、豊かな日本の食文化づくりの一翼を担い続けている。大門工場は15,300m2の敷地に第一工場と第二工場があり、延床面積は7,150m2。主に佃煮・惣菜を製造している。

所在地
兵庫県加東市大門67
お客さまホームページ
https://www.maruyanagi.co.jp/

※掲載の情報は取材当時(2024年9月)のものです。

この事例で導入いただいた製品・サービス

  • 太陽光発電サービス D-Solar
  • 水処理ソリューション D-Aqua
  • コージェネレーション
  • エネルギーサービス

下記フォームよりお気軽にお問い合わせください。

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