初期投資ゼロでC重油からLPガスへ燃料転換し、CO2排出量52%削減
「昭和の工場から令和の工場への転換」に向けて大きな一歩
朝日珪酸工業株式会社さまは、1964年7月に大分県にて創業以来、50年以上の歴史を誇るけい酸カルシウム保温材のメーカーです。常に技術向上に努め、優れた製品を生み出し続けることで、国内外で高い評価を受けています。また、長年蓄積してきた製造技術をベースとして、人造木材や各種耐火断熱材などの製造も行っています。
長年にわたりボイラ燃料は、C重油をメインにA重油もご使用でしたが、2022年2月にすべてLPガスへと燃料転換されました。同時に8t/hの水管ボイラを3t/hの貫流ボイラ3台へと入れ替えられました。これにより、大幅な省エネと環境負荷の低減、エネルギーコストの削減を実現されています。今回は、燃料転換を行われた背景や経緯、導入後の成果などについて、取締役工場長 兼 生産課長 高橋 哲也さまと生産課 山﨑 俊幸さまにお話を伺いました。
LPガスへの燃料転換によるメリット
- エネルギー使用量を46%、エネルギーコストを43%削減
- CO2排出量を52%削減し、環境負荷を低減
- 運転管理や燃料調達などの管理業務の省力化を実現
導入前の課題
C重油焚きボイラの運転は小回りが利かず燃料費が課題に
ボイラの運転管理の手間も大きな負担
燃料転換をご検討いただいた背景について教えてください。
当社では、燃料の8割を生産工程で使用する蒸気発生用の水管ボイラに使用していました。燃料としてはC重油をメインで使用し、C重油の加温用にA重油炊き貫流ボイラも使用していました。
燃料転換の検討を始めたきっかけは、2010年以降、ニーズの変化とともに品種構成が変わり「少量多品種」生産になったことです。従来のC重油焚きの水管ボイラでは小回りの効いた運転が不可能で、少量生産の際には余った蒸気を捨てている状態になっていました。具体的には、ボイラの失火を防ぐために、使用していない設備にも蒸気を送り続けるという運転をしており、そのため燃料費がかさんでいました。
加えて水管ボイラの管理の手間も課題でした。ボイラの立ち上げに2時間以上、立ち下げにも約1時間かかっていましたし、運転時はボイラ技師の資格者が常時監視する必要がありました。また、民家が近くにあるため、煙突からのばい煙にも気を遣いながら操業している状況でした。
C重油とA重油それぞれの管理・発注やバーナ整備などの作業も大きな負担でした。コスト面や管理面、環境面などあらゆる観点から、「燃料転換が必要」との結論に達しました。
導入前の検討内容
ボイラの燃料転換を検討するも、初期投資がネックに
導入に至るまでの流れを教えてください。
燃料転換については長年検討してきましたが、初期投資額がネックとなり頓挫している状況が続いていました。また、元々は都市ガスへの燃料転換を考えていましたが、導管が近くを通っていないため実現が困難でした。そこで、何かいい方法がないか、信頼できる会社に相談したいと考えていましたが、なかなか出会えずにいたのです。
そんな中でDaigasエナジーさんとのご縁があり、エネルギーサービスによる初期投資ゼロでのLPガスへの燃料転換や、その先の省エネまで見据えたご提案をいただきました。
検討を重ねた結果、C重油焚きの水管ボイラ8t/h×1台から、LPガス焚きの貫流ボイラ3t/h×3台への入替を決定しました。LPガスの供給設備については、納期の問題もあり、ストレージタンクではなく2.9tのLPガスバルク貯槽5基を設置することになりました。LPガスバルク貯槽は5年に1度(2回目以降は10年以内に実施)の開放検査が不要である点や、設置が容易で増設しやすい点がメリットだと感じています。
導入後の効果について
CO2排出量が52%減少し、環境負荷を低減
メンテナンスや燃料調達など、管理業務も格段に減少
導入後の成果について教えてください。
C重油を使用していた時と比較して、燃料転換後はエネルギー使用量を46%、エネルギーコストを43%削減できました。CO2排出量も52%減少し、環境負荷の低減が実現できました。目標としていた「昭和の工場から令和の工場への転換」に向けた大きな一歩となりました。
更新した貫流ボイラはボイラ技士免許が不要で、技能講習を受ければ誰でも扱うことができます。ボタン1つで着火や運転停止が可能で、立ち上げ・立ち下げの手間が格段に減少しました。従来の水管ボイラでは、「立ち上げを再度行うのが大変」という心理も働き、こまめな運転停止ができていませんでしたが、ボイラ更新後は従業員が率先してこまめな運転管理を心がけるようになっています。省エネ意識の高さが従業員に広がった点も大きな効果だと感じています。
エネルギーサービス契約には設備のメンテナンスやLPガスの調達・供給も含まれており、メンテナンスの手配や、燃料発注の手間もなくなりました。燃料発注については、以前は生産状況と油タンクの残量を毎朝チェックして発注をしていましたが、現在はLPガスバルク液面の遠隔監視により自動発注される仕組みになっており、管理がとても楽になりました。
導入の決め手
初期投資ゼロのエネルギーサービスと補助金活用に加え、省エネも
含めた最適化提案が決め手
導入の決め手やDaigasエナジーにご依頼頂いた理由を教えてください。
導入の決め手は主に2つあります。
1つ目は、初期投資ゼロのエネルギーサービスのスキームが活用できたことです。これにより長年のボトルネックだった初期投資の問題がクリアできるのは大きなポイントでした。さらに、環境省の補助金も合わせて活用し、コストの低減を図りました。申請に際しては、必要書類をご準備頂くなど手厚くサポートしていただきました。
2つ目は、燃料転換だけでなく、省エネも含めた最適化提案をしてもらえたことです。次の取り組みとして老朽化した乾燥炉の更新も検討していますが、Daigasエナジーさんには乾燥炉の省エネ診断を実施いただき、改善ポイントや熱効率の良い最適な熱源方式をご提案頂きました。改善ポイントについては、すぐにできることは既に実施し、省エネにつながっています。単なる燃料転換や機器単体の入れ替えにとどまらず、省エネのノウハウを活かしてプラスアルファの提案を頂けるのがDaigasエナジーさんの魅力だと思います。
今後の展望
工場全体のさらなる省エネや生産性向上に資する提案を期待
今後の展望やDaigasエナジーに期待することについて教えてください。
今回の燃料転換により、環境に対する社内の意識も高まったと感じています。2023年4月には、電気のCO2排出量削減のため再エネ電気も導入しました。今後も工場全体の省エネや生産性の向上に取り組んでいく予定です。さらに、工場のエネルギーの2割を占める電気の省エネや、生産過程で発生する汚泥の廃棄物量の減容なども検討していきたいと考えていますので、今後もDaigasエナジーさんには技術的なサポートをお願いしたいです。
担当者からひと言
広域エネルギー営業部 河井 亮太
Daigasエナジーでは、燃料転換から省エネ、補助金活用までワンストップで対応いたします。今回も、燃料転換にとどまらず工場全体の省エネを考慮した総合的な提案を評価いただけたと感じています。また、お客さまのニーズや環境に合わせて、様々なメーカーの中から最適な設備を選定できる点も強みだと自負しています。朝日珪酸工業さまのケースでは「小回りの効く運転」というご要望を受け、8t/h の水管ボイラから3t/hの貫流ボイラ3台への入れ替えをご提案しました。
今後もお客さまの課題に共に取り組み、省エネ・脱炭素化に貢献してまいります。製造業のお客さまにとっては製品の生産が一番重要なため、コストや環境性に加えて、生産性の向上にもつながるような提案を行っていきたいと思います。
今回導入頂いたLPガスバルク貯槽では、毎日残量を計測し、ある一定量を下回ると自動でLPガスローリー車が配送される仕組みになっています。朝日珪酸工業さまでは、従来お使いだった重油の管理や調達に手間がかかることを課題に感じておられましたが、LPガスへ燃料転換することで管理の手間を大幅に削減でき、喜んでいただけたことをうれしく思っています。これからも日々の燃料供給を確実に対応させていただくとともに、お客さまの更なる省エネやCO2削減につながるような、メリットのある提案を模索していきたいと考えています。
液化ガスエネルギー営業部 リーダー 福宮 那王童
お客さまのご紹介
朝日珪酸工業株式会社さま
朝日珪酸工業株式会社は、1964年7月にけい酸カルシウム保温材のメーカーとして誕生。工場の敷地面積は約44,000m²を誇り、3交代制で24時間製造を行っている。現在は、トンネライト®やレセパル®などの各種耐火断熱材など新しい製品の製造にも注力されている。
特に、天然由来の火山性軽石にヨウ素系無機化合物を担持した弱酸性の散布型除菌剤である「ヨドックス粒®」は、鳥インフルエンザ防疫などに効果が期待できるとして、大きな注目を集めている。
- 所在地
- 大分県大分市大字政所字久保田2271番の2
- お客さまホームページ
- https://www.aa-material.co.jp/asahikeisan/
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