多品目の廃液を含む工場排水を高度処理することで安定な処理水質を保ち、設備運用コストも大幅に削減
400年以上の歴史を持つ看板商品「養命酒」をはじめ、クラフトジンやみりんなど、さまざまな酒類、飲料、食品の製造販売を行う養命酒製造株式会社さま。
伊那谷の雄大な自然に囲まれた駒ヶ根工場では、排水処理設備の更新に伴い、水処理ソリューションサービス「D-Aqua」をご導入いただきました。原水槽の容量増設と膜分離活性汚泥法(MBR)による好気処理設備を併せて、高濃度な廃液流入に伴うpH中和調整作業の削減と、処理水の水質の安定化が実現しました。今回はD-Aqua導入の背景や検討の経緯、導入後の成果などについて駒ヶ根工場 設備管理グループの横沢 栄治さま、渡辺 博さまにお話を伺いました。
D-Aqua導入によるメリット
- 原水槽の容量増設により多品目の廃液を均一化し、MBR処理装置により河川放流可能な水質を確保
- pH中和調整にかかる労力と時間を大幅に削減
導入前の課題
品目増加に伴う高濃度の廃液が課題
水質の安定には熟練の技が必要だった
D-Aquaを導入いただいた背景について教えてください。
弊社工場では養命酒をはじめ、さまざまな製品を生産しています。そのため、処理する廃液の品目も多岐にわたります。
既存の排水処理設備は1972年の工場設立当初から使用しており、製造工程で発生する洗浄排水等を曝気槽で好気処理を行っていました。
課題は、工場設立当初と比べ現在は多品目を製造しているのに対し、原水調整槽の容量が小さいため、曝気槽に流入する原水の水質が変動することにありました。例えば、高濃度の排水が流入すると曝気槽に設計条件を超える負荷がかかります。そこで、従来は原水調整槽の原水の水質を手作業でpH中和調整したり、曝気槽内の微生物の数を多めに維持したりして、かろうじて処理していました。
pH中和調整や曝気槽内の微生物の数の維持管理は、工数もかかり、技術も必要です。場合により、熟練の作業員でも1日に3時間ぐらい手を取られる時もありました。
工場の生産を止めることなく、河川放流する排水の水質を維持しながら、処理設備の管理にかかる時間や労力、リスクを軽減することが目下の課題だったのです。
導入前の検討内容
従来の沈殿槽方式から膜処理方式への変更を検討
原水槽の大容量化により廃液濃度を均一化
最終的な仕様決定に至るまで、どのような検討を行われましたか?
当初は、最後の仕上げの段階で沈殿槽や加圧浮上を用いて固液分離を主とするシステムを検討していました。そんな中、Daigasエナジーさんから提示されたのはMBR(膜分離活性汚泥法)処理装置による排水の水質安定化でした。
膜を使用する排水処理設備に対し、当初は「本当に閉塞や損傷のリスクがないのか」という懸念がありましたが、弊社が抱く疑問に対し、閉塞を回避するメンテナンス機能・運用や耐久性の高さ、高度な処理能力などのベネフィットを示していただき、前向きに検討しました。Daigasエナジーさんの提案のほうが弊社のニーズに合致していると考え、最終的に採用を決めました。
また、pH中和調整や曝気槽内の微生物の数の維持管理で手間がかかっているという課題に対しては、従来にくらべ原水調整槽の容量を増やすこととなりました。多品目を製造することで流入する排水の濃度が変動しても、原水調整層の水質が均一化されますし、MBR処理装置にかかる負荷も安定化すると期待しました。
導入後の成果
1日3時間ものpH中和調整作業を削減
労力を抑えながら河川放流可能な水質を維持
導入の成果を教えてください。
何よりも導入効果を実感するのは、管理面です。原水槽の容量拡大によって廃液が均一化され、曝気槽へと流入される水質が安定しました。それにより、工数のかかっていた中和調整などの維持管理が不要になりました。多い時期には毎日、3時間ほどあった作業時間も解消され、更新前に比べると労力や時間が大幅に削減できています。
膜が閉塞するリスクに関しては、付着物を除去する逆洗浄機能等によって回避できています。定期的な逆洗浄は自動で行われるため、作業の手間はかかりません。
安定して清澄な処理水を放流できる点も、大きな魅力だと感じます。曝気槽に流入する水質がたとえ変動しても、膜分離槽によって汚泥と分離するため、安心して河川放流できるようになりました。これで工場の操業を停止するリスクもなくなったと言えます。
導入の決め手
施設見学によりMBR処理装置の性能を実感
排水の透明度の高さが導入の決め手
導入の決め手について教えてください。
実際にMBR処理装置を利用している施設を見学して、性能を実感できたのが一番の決め手です。使用者の声を聞くことが納得感につながったのはもちろん、何よりも処理後の水がいかに清澄であるかをこの目で確認できました。実際の排水を目の当たりにして、あまりの透明度に感動したのを覚えています。
施設見学をはじめ、さまざまなベネフィットを示していただくなかで「弊社の課題感を解決する最適な提案をいただけている」という印象も受けました。企業としての信頼感も、Daigasエナジーさんを選ぶ決め手になりました。
さらに「水質が安定すれば曝気槽内の微生物にとって住みやすい環境になる」という考え方に共感を覚えたのも、導入へと至った理由の一つです。
汚水中の有機物を分解する好気性微生物に対し「環境を良くして、ぜひ可愛がってほしいです」という言葉をいただき、そのような姿勢で関わってくださったことに、排水処理設備を担当する身として嬉しく感じました。
今後の展望
清澄な処理水は場内散水にも利用
今後も継続的な水質安定と省エネの両立を目指す
今後の展望や、Daigasエナジーに期待している環境やエネルギー対策を教えてください。
透明度が高い、清澄な処理水を有効活用したいと考えております。現在は植物の水やりに活用しています。その用途をもっと広げていきたいです。これは、弊社が推進している「持続可能な経営」に関する活動の一貫でもあります。
弊社工場は緑に囲まれた「森林工場」をコンセプトに掲げており、自然環境との調和を何より重視しています。たとえば汚泥の処理を委託する業者に関しては、堆肥化してくださる企業を選んでおります。今後は再生可能エネルギーの活用なども視野に入れ、さらに環境に配慮した取り組みを推進していきたいと考えています。
また、MBR処理装置にかかる電力を可能な限り削減したいと考えています。排水処理機能はそのままに省エネも実現する。Daigasエナジーさんには、その両方を兼ね備えた提案を期待しています。
水処理ソリューションサービス「D-Aqua」については以下をご覧ください。
担当者からひと言
Daigasエナジーでは、排水の性状に合わせて最適な水処理サービスをご提案しています。養命酒製造株式会社 駒ヶ根工場さまでは、MBR処理装置と原水槽の容量拡大によって安全な水質の確保と、排水処理設備の管理に関する労力、時間の削減が実現しました。
もともとは「膜処理以外で」とご要望をいただいていたのにもかかわらず、MBR処理装置をご提案させていただいたのは、それがお客さまにとってベストだと感じたからです。効果を実感していただけるよう見学会を実施し、最終的にはご導入につながりました。このようなご提案ができたのは、お客さまご自身の言葉で課題感をつぶさに教えてくださったからにほかなりません。好意的なサポートがあったからこそ、駒ヶ根工場さまにとって最適な設備を実現できました。
広域エネルギー営業部 吉岡 伸泰
お客さまのご紹介
養命酒製造株式会社 駒ヶ根工場さま
1602年に創製し、400年以上の歴史を持つ薬酒「養命酒」を製造する養命酒製造株式会社。「生活者の信頼に応え、豊かな健康生活に貢献する」を企業理念に掲げ、近年は伝統によって培われた合醸法を活用したリキュール「夜のやすらぎハーブの恵み」や、クラフトジン「香の森」「香の雫」などの新商品も数多く展開している。中央アルプス山脈の麓、豊かな水と自然に囲まれた駒ヶ根工場は、1972年に操業を開始した。地下から汲み上げた天然水を原料とする原酒づくりから、包装、出荷までを一貫して行う。
- 所在地
- 長野県駒ヶ根市赤穂16410
- お客さまホームページ
- https://www.yomeishu.co.jp/index.html
下記フォームよりお気軽にお問い合わせください。