D-Aquaで工場廃液を10倍以上に濃縮し、産業廃棄物を大幅に削減
環境にやさしい製造所に進化
日鉄鋼管株式会社さまは、自動車、建設機械、土木・建材分野などにおいて、電縫管の製造と設計・開発を行っている溶接管メーカーです。年間50,000トンもの電縫管を製造している尼崎製造所では、産業廃棄物の削減を目指して水処理ソリューションサービス「D-Aqua」を2019年に導入いただきました。廃液真空濃縮装置により工場廃液を10倍以上に濃縮することで、年間の産業廃棄物の排出量が大幅に削減されました。
今回は、D-Aqua導入の背景や検討の経緯、導入後の成果などについて、尼崎製造所 尼崎工場 設備室 主査の佐々木浩道さまにお話を伺いました。
D-Aqua導入によるメリット
- 工場廃液を10倍以上に濃縮して産業廃棄物の排出量を大幅に削減し、環境負荷を低減
- 廃液処理後の蒸留水を工場用水に再利用するなど、無駄をなくして節水に貢献
導入前の課題
製造品種の増加に伴って産業廃棄物が年間1,000トンに迫り、対策が急務に
導入をご検討いただいた背景について教えてください。
尼崎製造所は一般構造用炭素鋼鋼管や機械構造用炭素鋼鋼管の製造を主に行っています。2017年から電縫管の品種が増え、廃液(鋼管生産時の洗浄排水や加工油が溶け込んだ汚水など)が急増し、それに伴い外部委託処理量が増大しました。それ以降も製造品種をさらに増やす計画があり、年間の産業廃棄物の総量が1,000トンを超える事態が目前に迫っていました。
年間の産業廃棄物の総量が1,000トンを超えると「多量排出事業者」に認定されます。何よりも地球環境にとって好ましくありません。会社方針の「社会に貢献する企業」であり続けるためにも、産業廃棄物の削減を最優先の課題としたのです。テーマは「水を大事にする」と「無駄の排除=再利用・再資源化」の具現化としました。
導入前の検討内容
廃液のブレンドで発泡性の問題が解決
亜鉛を含む工場廃液をD-Aquaで処理
導入に至るまでの流れを教えてください。
課題解決に向けて着目したのが、尼崎製造所の産業廃棄物の約95%を占める工場廃液でした。特に製造過程で発生する亜鉛を含んだ廃液の処理が増大。自社での処理が望ましいと考えるも、外部委託するしか方法がありませんでした。そこで、廃液を減量化する技術を探し始めたのです。
多くの企業・メーカーに問い合わせましたし、インターネットでも探しましたが、「これだ!」と感じられる技術や設備には出会えませんでした。
そんな中、2013年頃に「廃液真空濃縮装置」をご提案いただいたDaigasエナジー(当時は大阪ガス)さんを思い出したのです。すぐに担当者に連絡を取り、自社の廃液がうまく濃縮できるか調べるためラボテストを開始しました。
廃液濃縮の課題は「発泡の抑制」でしたが、テストを繰り返すうちに、数種の廃液を混ぜ合わせて処理すれば泡立つことなく濃縮できることが分かりました。良好なテスト結果が得られ「これこそ探し求めていた技術・設備だ!」と確信したのです。
稼働までDaigasエナジーさんと何度も打ち合わせを行い、最も効果的でコストメリットが出ると判断した「廃液真空濃縮装置 スーパーデスター」の導入を決定しました。
導入後の成果
工場廃液を10倍以上に濃縮し、産業廃棄物の排出量を大幅に削減
導入による成果を教えてください。
廃液真空濃縮装置は、廃液を「蒸留水」と「濃縮された廃液(濃縮液)」に蒸留分離させることで減量します。
鉱物油を含む一部の廃液を除き、工場廃液を10倍以上に濃縮することができました。その結果、工場全体の廃液量が1/4以下に減り、年間1,000トンに迫っていた産業廃棄物を200トン近くまで大幅に削減することができました。当然、廃棄するための事務手続き等の回数も大幅に抑えられてコストメリットも出ています。
蒸留水は工業用水として再利用するので、環境負荷も低減しました。D-Aquaの設置が、環境に対する社内の意識をさらに高める一つの要因になっているとも感じます。所内では、社員一人ひとりが「廃棄物を減らそう」「無駄をなくそう」といった意識をより強く持つようになったと感じられる場面を見かけるようになりました。
導入の決め手
処理困難物質である亜鉛を完全分離
産廃処理量削減により環境保護に貢献
導入の決め手を教えてください。
D-Aquaのスーパーデスターでは想定していた以上に廃液を濃縮でき、産廃処理量の削減により「環境保護に貢献」できることが導入の決め手となりました。
ラボテストの段階で数回調べたところ、蒸留水への亜鉛含有量はいずれも検出限界値以下で、ほぼ完全に除去できていたため工業用水としての再利用が可能になり、「水を大事にする」と「無駄の排除=再利用・再資源化」が実現できる目処が付きました。
環境担当として数十年間、毎日廃液の状態を見て、さまざまな濃縮の技術や設備を探していた私が「この装置ならうまくいく」という確信が持てましたし、Daigasエナジーの担当者の方々も熱い想いで私の要求に応えてくれたので、「信用できる仲間」だと感じるようになりました。
工事までの準備・実作業も非常に迅速で、8月の着工で9月に垂直立ち上げできました。また、工事に携わる方々の安全意識が非常に高く、作業の一つひとつをスピーディーかつ丁寧に行われていたのが印象的でした。
今後の展望
D-Aqua・D-Solar・D-Fireを連携し、「工場廃液ゼロ」の排水処理施設の新設を目指す
今後の展望や、Daigasエナジーに期待することを教えてください。
Daigasエナジーさんは、ガス関連だけでなく、あらゆるサービス・ソリューションを提供されています。何か課題があればDaigasエナジーさんに相談したいと考えています。
直近では、排水処理施設の更新でもご協力いただいています。尼崎製造所の排水処理施設は、操業から50年以上経過しているため、更に節水を可能とした処理施設への新設を計画しており、現在、工場向けIoTサービス「D-Fire」による無人稼働の排水処理施設を企画提案いただいているところです。
新たな処理設備は建屋内に設置する計画なのですが、建屋に太陽光発電サービス「D-Solar」を設置し排水処理に必要な電気を少しでも賄えれば、環境にやさしいエネルギー循環をさらに加速させられると考えています。
D-Aqua・D-Solar・D-Fireを組み合わせて、目標とする「工場廃液ゼロ」と「無人化」、さらには「環境性能」も兼ね備えた排水処理施設を実現するために、Daigasエナジーさんにはプロ目線での情報提供と柔軟な企画提案を期待しています。
水処理ソリューションサービス「D-Aqua」については以下をご覧ください。
担当者からひと言
Daigasエナジーでは、廃液の性状に合わせて最適な濃縮処理方法をご提案しています。日鉄鋼管株式会社 尼崎製造所さまでは、数種の廃液をブレンドすることで効率的な濃縮が実現しました。
D-Aquaはレンタル費にフルメンテナンスサービスを含めています。これは、設備を良好な状態で稼働させ、トータルでコスト低減と効率化を実現するためです。設備の状況も把握できるため運用改善の提案も行っています。
Daigasエナジーはエネルギー会社ですが、D-Aquaのような水処理サービスをはじめ、お客さまのニーズ・課題に対し、あらゆるソリューションサービスを高品質かつワンストップで提供しております。今度もお客さまのお困りごとに真摯に応えるべく、ご意見を頂戴しながら、多彩な提案を行ってまいります。
兵庫産業エネルギー営業部 黄瀬 俊
お客さまのご紹介
日鉄鋼管株式会社 尼崎製造所さま
日鉄鋼管株式会社は、日本製鉄グループの電縫管事業を担う溶接管メーカー。1911年に創業し、2019年4月に日鉄鋼管と商号を改めた。創業以来1世紀以上の長きにわたり、自動車・建設機械、土木・建材分野へ高品質な電縫管を提供している。
尼崎製造所は、全国に5つある製造所のうちの一つで、1940年に旧日本パイプ製造引抜管専用工場として操業を開始した。現在は一般構造用炭素鋼鋼管や機械構造用炭素鋼鋼管を中心に製造している。特に強みとなっているのは、ステンレス鋼鋼管の製造。顧客の多彩なニーズに応えつつ、安全衛生管理や環境負荷低減の独自の取り組みも積極的に進めている。
- 所在地
- 兵庫県尼崎市東塚口町2-4-65
- お客さまホームページ
- https://www.nspc.nipponsteel.com/
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