日本のエネルギーの未来を示す「第6次エネルギー基本計画」をわかりやすく解説

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第6次エネルギーのイメージ

日本のエネルギー政策の指針や計画をまとめた「エネルギー基本計画」の最新版である「第6次エネルギー基本計画」が発表されました。この計画では、気候変動への対応とエネルギー需給構造に関する課題の克服が掲げられており、学校や病院などの施設運営にも大きく関わるものとなります。同計画によってこれから何が変わるのか、解説します。

2050年までに温室効果ガスを「ゼロ」にしなければいけなくなった

2050年カーボンニュートラルは、日本政府が掲げた「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」という目標です。この2050年カーボンニュートラルまでの道筋を具体的な計画に落とし込んだのが、2021年10月22日に閣議決定された「第6次エネルギー基本計画」です。2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度比で46%削減するという道筋も示されています。

エネルギー基本計画とは、日本におけるエネルギー政策を長期的・計画的に進めるための方向性を示すもので、2003年に初めて制定され、以後3〜4年ごとに、世界のエネルギー情勢や環境保護機運、国内世論を視野に入れながら改定されてきました。

今回改定された第6次エネルギー基本計画では、安全の確保を大前提としつつ、安定的で安価なエネルギー供給の確保と、気候変動問題への対応を進めるというエネルギー政策の大前提とされてきた「S+3E(安全+安定供給・経済性・環境性)」の大原則をこれまで以上に追求していくためにも、あらゆる政策を総動員していかなければならないとうたわれています。

エネルギー基本計画の実現に向けて

第6次エネルギー基本計画を実現するためには、産業界、消費者、政府が今以上にカーボンニュートラルなどへの取り組みを進めていくことが必要であり、2030年に向けた対応として以下の3つの視点が大切です。

一つ目は「再生エネルギーの活用」です。太陽光発電や風力発電の導入拡大や、コスト低減の取り組みなどで、温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーをさらに活用していくことが必要です。

二つ目は「レジリエンスの強化・分散化」です。これは、エネルギー源を多様化することや、ガスインフラのレジリエンス強化などを通じて、災害に強いエネルギーインフラを構築することが含まれます。

三つ目は「徹底した省エネ」です。新たな省エネ技術の開発や、排熱などこれまで利用していなかった未利用エネルギーの活用、AI・IoTなどIT技術やエネルギーマネジメント技術活用などになります。

再エネ・省エネ設備導入に加えて、電力プランという選択肢も

学校や病院といった施設の運営者が、2050年カーボンニュートラルの実現に貢献するためには何をすればいいのでしょうか?

最も踏み出しやすい選択肢の1つは、「再生エネルギーの活用」ではないでしょか。太陽光発電などの再生可能エネルギー発電設備の導入です。最近では初期投資ゼロで太陽光発電が設置できるプランも出てきています。太陽光発電は「レジリエンスの強化・分散化」(災害時のBCP対策)という観点でも有用です。

他にも脱炭素化された電力プランを選ぶという選択肢もあります。施設運営者がこうした電力プランを選択すれば、CO2削減に大きく貢献することができます。

それ以外にも、コージェネレーションシステム(以下、コージェネ)という設備を建物に導入するというのも手段のひとつとなります。コージェネとは、ガスなどを駆動源にした発電機で電力を生み出し、その発電の際に生まれた排熱を給湯や冷暖房などに利用するシステムのことです。コージェネは災害時などでもエネルギー供給が可能のため、省エネに加え、「レジリエンスの強化・分散化」につながる地域の分散型エネルギーシステムとして活用できる側面もあります。

環境に取り組むことがビジネスにもメリットをもたらす

最近では消費者の側で、環境への負荷が少ない製品やサービスを優先的に購入する、いわゆる「グリーンコンシュ―マー」という動きが見られます。「Refuse(環境負荷の大きい製品を買わない)、Reuse(再利用する)、Reduce(ゴミを減らし長く使う)、Recycle(再資源化する)」という行動規範を持っているグリーンコンシューマーに評価される施設であることは、これからの施設運営の観点では重要な要件になるといえるでしょう

同じく最近の動きとして、環境・社会・ガバナンスの要素も考慮した投資「ESG投資」も世界共通のスタンダードになりつつあります。ESG投資とは、企業への投資を行うかどうかの基準に、環境・社会・企業統治に配慮しているかどうかをチェックするもの。CO2削減など、環境に配慮した施設運営を行うことは、株主などのステークホルダーからも高く評価される時代になってきています。

第6次エネルギー基本計画の影響は幅広い分野に及び、民間でもさまざまな脱炭素化に向けた動きがあります。カーボンニュートラル実現につながるさまざまな取り組みは、社会貢献になるだけではありません。「脱炭素化に積極的である」という姿勢を表明することでブランディングにつながり、さらに将来的には企業を評価する基準としての重要度も増してくると考えられます。

地球の環境を維持するために、地球の環境を維持するため、環境保護に取り組むことはとても大切です。環境への取り組み、環境負荷低減は、社会のためだけではありません。個人法人を問わず、自分たちの未来を切り開くために必要になってきているのです。まずは「自分たちができることは何か」を考え、次のアクションを検討してみてはいかがでしょうか。

再生可能エネルギー導入を進める

レジリエンスの強化・分散化につながる

換気の自動化で施設のさらなる省エネ・省CO2を促進

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