デマンドレスポンスサービス「D-Response」の導入で、報酬を得ながら電力系統安定化や再エネ電力普及に貢献

株式会社タダノさまは建設用クレーンのリーディングカンパニーです。1955年に日本初の油圧式トラッククレーンを開発し、現在は建設用クレーンや車両搭載型クレーンおよび高所作業車などの開発・製造・販売を行っています。2023年には世界初のフル電動ラフテレーンクレーン「EVOLT eGR-250N」を販売開始し、走行・クレーン作業双方でのCO2排出ゼロを実現。環境対応製品の拡充に取り組まれています。
上記を含めて、地球環境の改善、脱炭素社会の実現するための取り組みを「Tadano Green Solutions」と名付け、2050年の「カーボンネットゼロ」実現に向けて推進されています。
その一環として、志度工場・香西工場において、2022年よりデマンドレスポンスサービス「D-Response」を導入いただきました。今回は導入の背景や効果、デマンドレスポンスの発動時の対応などについて、総務部 サステナビリティ推進グループ アシスタントマネジャー 玖村 洋一さまと志度工場 生産サポートグループマネジャー 長田 幸三さまにお話を伺いました。
D-Response導入によるメリット
- 既存の自家発電設備の活用により報酬を獲得
- 電力系統安定化や再エネ電気普及の社会課題に貢献
- 従業員の電気や工場設備に対する知識・知見が向上
導入前の課題
新たな投資なしでコストメリットを生み出せる点にメリットを感じ導入を検討
「D-Response」の導入をご検討いただいた背景について教えてください。
当社では「2050年カーボンネットゼロ」の実現を目指し、CO2排出量の削減を進めています。その取り組みの一つとして、2023年に多度津工場において太陽光発電設備を導入しました。導入の計画段階では、Daigasエナジーさんを含む数社からご提案をいただき、PPAの契約内容や余った電気を買い取ってもらえる点を評価して、Daigasエナジーさんにお願いすることにしました。太陽光発電の導入でやり取りする中で、次の提案としてデマンドレスポンスの話を頂いたのがきっかけです。
当時はまだデマンドレスポンスが浸透しておらず、その仕組みやメリット・デメリットを理解して社内に説明するのに時間を要しましたが、新たな設備投資は必要なく既存設備を活用することで報酬を得ることができる点にメリットを感じ、また当時は、大きなリスクもないと判断して導入の検討を進めました。

右)総務部 サステナビリティ推進グループ アシスタントマネジャー 玖村 洋一さま
デマンドレスポンスサービス「D-Response」
電力ひっ迫時にお客さまに節電いただき、Daigasグループがお客さまの節電をアグリゲートしてバーチャルパワープラント(VPP:仮想発電所)を構築します。D-Responseは、電力系統の安定化、ひいては再エネ電力の普及拡大など、社会に貢献いただくサービスです。
お客さまには、待機いただくことによるkW報酬、および発動実績に応じたkWh報酬をお支払いします。
※ご契約内容によってはkW報酬のみ、もしくはkWh報酬のみ、お支払いする場合がございます。


導入時の検討内容
既設のディーゼル発電機による発動時の対応方法を慎重に検討
懸念していた逆潮流の課題もクリア
「D-Response」導入時の検討内容について教えてください。
当社では電力ピークカット用に志度工場にディーゼル発電機720kWを3台、香西工場にディーゼル発電機500kWを3台備えています。デマンドレスポンスの発動時には、発電機の起動電力の設定を下げるだけで発電機の起動及び出力の増加をすることができ、生産ラインに影響を及ぼすことなく対応できています。
発動時の対応については、現場の従業員とも相談しながら慎重に運用を決めていきました。デマンドレスポンスの発動要請を受けてから、現場の方で発電機の設定をあらかじめ決められた値に変えるのですが、マニュアルを整備して設定間違いが起こらないよう確認作業を徹底するようにしています。終了時には設定が自動で戻るようタイマーを設定しています。また、発動要請は3時間前にメールで連絡が来るのですが、現場で対応できる人員を志度工場では3名、香西工場では6名配置し、必ず誰かが時間内に対応できるように体制を組んでいます。
一方で、懸念点としてデマンドレスポンス発動時の逆潮流のリスクがありました。特に香西工場では逆潮流なしの太陽光発電設備があり、デマンドレスポンス発動時に発電機を手動で稼働した場合には、太陽光発電の動きによっては逆潮流する恐れがあり対応に苦慮しました。この懸念点については、Daigasエナジーの担当者さんから「工場の負荷を考えながら発電機の起動電力の設定を調整することで逆潮流を防げるのでは」と助言があり、これにより運用上の課題もクリアできました。とはいえ、どの程度に設定するかは手探りだったため、工場の負荷実績を分析しながらDaigasエナジーさんと一緒に検討していきました。

導入後の効果
2024年度は8回の発動要請への対応が無事成功
社会課題への貢献と、従業員の電気や設備に対する知識向上も大きな成果
「D-Response」導入による成果を教えてください。
2023年においてはデマンドレスポンスの発動は一度もありませんでしたが、待機による報酬を得ることができました。2024年度は急に発動要請が増え、現時点で8回のデマンドレスポンス発動がありましたが、現場がきちんと準備してくれていたので無事にすべて対応できました。2024年度は発動実績に応じた報酬も得ることができると思われ、大きなコストメリットを得られると考えています。
また、電力ひっ迫時に自家発電を活用して、社会課題である電力供給の安定化や再エネ普及に貢献ができていることも、企業として重要な成果だと考えています。

さらに、デマンドレスポンスへの対応を通じて、電気や工場の設備についてあらためて考える機会になりました。最適な対応を皆で一生懸命に模索する中で、自分達のエネルギーの使い方に対する知識や知見が深まりましたし、従業員がデマンドレスポンスに使命感を持って対応してくれているのを感じています。これらも導入による大きな成果だと思います。
導入の決め手
Daigasエナジーの工場設備に対する豊富な知識やエンジニアリング力を評価

導入の決め手やDaigasエナジーにご依頼いただいた理由を教えてください。
前述の通り、既存設備の活用で報酬が得られる点、また、産業界の一企業として電力系統安定化の社会課題に貢献できる点が導入の決め手になりました。Daigasエナジーさんは工場の設備や電気に関する知識などが豊富で、とても安心感がありました。提供した工場のデータに対する回答や、出てきた課題への対応策の提案も早く、導入に際して色々と相談できる点がよかったと感じています。
今後の展望
CO2削減に大きく寄与するメタネーションに期待
総合エネルギー会社として、会社と社会に有効な提案を希望
今後の展望や、Daigasエナジーに期待することを教えてください。
「2050年カーボンネットゼロ」の目標に向けてCO2排出量の削減を進める中で、LNGへのエネルギー転換も検討していきたいと考えていますし、将来的にはメタネーションによってガスのカーボンニュートラル化が実現することに大いに期待しています。総合エネルギー会社として、ガス・電気だけでなく、バイオやアンモニア・水素の最新技術なども含めて、会社と社会に有効な提案を頂きたいです。
当社では2023年12月に世界初のオール電動のクレーンを発売するなど、環境対応製品の拡充にも力を入れています。Daigasエナジーさんとも、CO2排出量の少ないエネルギーを使った建機のパワーユニットの共同開発なんかができたら面白いと感じています。今後も多方面で協力者になってもらえると有難いです。

担当者からひと言

「D-Response」は、新たな設備投資なしでコストメリットを生み出しながら社会課題に貢献できるデマンドレスポンスサービスです。タダノさまは自家発電設備を持っておられるという強みをうまく活かして、デマンドレスポンスにメリットを感じて頂けた点がよかったと思っています。
また、タダノさまは「2050年カーボンネットゼロ」の実現を目指し、様々な取り組みを進められています。Daigasエナジーとしても、省エネやCO2削減に資するご提案や、将来的なメタネーションや最新技術のご紹介をさせて頂きながら、カーボンニュートラルの実現に向けて一緒に歩んでいきたいと考えています。
広域営業部 川西 敬
お客さまのご紹介
株式会社タダノさま
1955年に日本初の油圧式トラッククレーンを発売して以来、タダノは業界のリーディングカンパニーとして、お客様の安全と地球環境に配慮した新たな価値を提供するための戦略を推進しています。2023年には世界初となるフル電動のラフテレーンクレーンを発売しました。中期経営計画(24-26)に掲げる「Reaching new heights」のスローガンのもと、当社は地域社会・国際社会発展への貢献と地球環境の保全に役立つ事業活動を推進し、すべてのステークホルダーの期待に応え「世界に、そして未来に誇れる企業」を目指しています。
- 所在地
- 志度工場 香川県さぬき市志度5405番地3
- 香西工場 香川県高松市香西北町747番地40
- お客さまホームページ
- https://www.tadano.co.jp/index.html

志度工場

「イースター島でのモアイ修復プロジェクト」では15体のモアイ像を修復
※掲載の情報は取材当時(2025年1月)のものです。
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